建物明渡請求の手続き、手順について

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。

借主が一定期間を超えて賃料を払わない場合、大家の方から契約を解除して明け渡しを求めることができます。

しかし借主が自ら退去に応じなければ大家が「建物明渡の断行」をしなければなりません。

建物明渡の断行は「強制執行」の一種です。複雑な手続きを要するので、法的に正しい手順を把握しておきましょう。

今回は建物から不法占拠者を退去させるための「建物明渡の断行の強制執行」の手順や流れ、費用を解説します。

賃貸物件を経営している方はぜひ参考にしてみてください。

目次

1.建物明渡の断行の強制執行とは

訴訟で建物の明渡し請求を行い、判決で退去命令が出たら多くの人は自ら明け渡しをします。しかし中には判決に従わない人も存在します。

その場合、大家の方からあらためて裁判所へ申し立てて「強制執行」を行う必要があります。

強制執行とは、判決や和解で義務が生じているにもかかわらず自ら従わない人に対し、強制的に義務を履行させるための手続きです。

明渡し命令が出ているのに無視する相手に対しては、明け渡しをさせるための強制執行をしなければならないのです。

建物明渡の強制執行を法律用語で「建物明渡の断行」といいます。

賃料を払わないで契約を解除したにもかかわらず出ていかない元借主が不法占拠していたら、早めに建物明渡断行の強制執行を申し立てましょう。

2.建物明渡し断行の強制執行の流れ

建物明渡し断行の強制執行はどのような流れになるのか、以下に手順を示します。

  • 必要書類を揃える
  • 明渡し断行の強制執行を申し立てる
  • 執行業者(執行補助者)を選定する
  • 催告を行う
  • 強制執行を行う

それぞれのステップについて見てみましょう。

STEP1 必要書類を揃える

明渡し断行の強制執行を申し立てるときには、いくつかの書類が必要です。

  • 判決書などの債務名義

債務名義が判決の場合、確定証明書も必要です。判決が出た裁判所で取得しましょう。

  • 執行文

判決が出た裁判所へ申請して取り寄せましょう。

  • 送達証明書

判決が出た裁判所へ申請して取り寄せます。

上記のほか、以下のような書類も用意しなければなりません。

  • 強制執行の申立書

建物明渡し断行の強制執行を申し立てるための書面です。

以下のような資料を作成しておくと、スムーズに明渡し断行を進めやすくなるでしょう。

  • 債務者に関する調査結果

債務者の現状について調査した結果を添付すると、執行官が強制執行を進める際の手助けとなります。

  • 執行場所の案内図

物件のある場所の案内図で、自分で作成する必要があります。用意しておくと場所が特定されるので、強制執行を進めやすくなるでしょう。

STEP2 明渡し断行の強制執行を申し立てる

書類が揃ったら、明渡し断行の強制執行を申し立てます。

申立先は物件のある場所を管轄する裁判所の「執行官」です。

執行官に申立をする際、「予納金」を支払わねばなりません。金額は物件や相手方の人数、裁判所によっても異なりますが、おおむね6~10万円程度となるケースが多いでしょう。

STEP3 執行業者(執行補助者)を選定する

建物明渡し断行の強制執行を申し立てたら、すぐに執行業者(執行補助者)を選定する必要があります。執行補助者とは、現地に同行して建物明け渡しに必要な現実の作業を行う業者です。

たとえば鍵を開けて中に入ったり荷物をまとめて運び出したり保管場所へ運んだりするのが執行業者です。

執行官本人はこういった作業を行いません。当事者が事前に執行補助者を選定して執行官へ連絡先等を伝えなければなりません。

執行業者に対応を依頼すると費用がかかります。依頼先によって大きく金額が異なるので、きちんと仕事をしてくれて費用は安い、良心的でスキルの高い業者を選定しましょう。

STEP4 「催告」を行う

明渡し断行の強制執行を行う際には「催告」が行われます。

催告とは、事前に相手方に対して「任意に出ていくように」と通告する手続きです。催告の際には執行官と債権者、執行業者、弁護士に依頼していれば弁護士が一緒に現地へ行き、債務者へと通告を行います。

相手がいない場合でも催告は可能です。その場合、相手がいなくても物件内に入り、紙を貼り付けて帰ってきます。

催告の内容

執行官が相手に対して行う催告の内容は、以下のようなものです。

  • 借主の占有移転を禁止する

催告を行ってから実際に明渡し断行の強制執行をするまでには日数がかかります。その間に借主が第三者へ建物の占有を移してしまい、第三者へ明け渡しの効力が及ばないと債権者には大きな不利益が及ぶでしょう。

そこで執行官は借主に対し「占有の移転を禁止する」通告をします。この後に建物の占有が第三者へ移された場合、その第三者に対しても明渡しの効力が及びます。

  • 建物明渡しの断行日

催告では、実際に建物明け渡しの断行を行う日を告げます。基本的には催告日から1か月が経過する少し前くらいの日にちが設定されるのが一般的です。

  • 催告日から1か月を経過する日が明け渡しの期限となる

催告では、相手方に任意に建物から退去するよう求めます。その際、明け渡しの期限がもうけられます。具体的には「催告日から1か月が経過する日」が明け渡し期限です。

ただし実際の明渡し断行日は「期限の経過する少し前の日にち」に設定されるのが通常です。債務者が明渡し断行の強制執行を受けないためには、期限より前に任意で出ていかねばなりません。

  • 期限までに第三者へ占有移転させた場合、第三者(占有者)に対して強制執行を行う

催告では、執行官によって「占有移転の禁止」が」告げられます。これを実効化させるため「万一借主が期限までに占有を移転させた場合には、その第三者に対して建物明渡し断行の強制執行を行う」ことを告げます。

  • 建物明渡しの断行日

実際にいつ建物明渡し断行の強制執行を行うのかを告げます。明渡し期限の少し前が指定されるのが一般的で、期限とは必ずしも一致しないので注意しましょう。

  • 借主に引き渡しができなかった動産については売却や処分をする可能性がある

建物明渡し断行の強制執行では、さまざまな荷物や不要物などが出る可能性もあります。

当日その場所に借主がいたら荷物の引き渡しができますし、後に引き取りに来た場合にも引き渡しが可能です。

一方借主がその場におらず引き取りにも来ない場合、荷物は処分するしかありません。価値のあるものは売却されます。

催告では、建物明渡しの結果荷物や不要物が売却されたり処分されたりする可能性があることも相手へ通告します。

催告が行われる時期

明け渡しの催告は、申立があってから原則として2週間以内に行われます。

相手が任意に明け渡せば解決できる

明け渡しの催告をすると、多くの不法占拠者は自分から明渡しに応じます。その場合、次の段階に進むまでもなく物件を取り戻せます。

STEP5 明渡し断行の強制執行を行う

催告をしても相手が任意に出て行かない場合には、最終的に明渡し断行の強制執行をするしかありません。

断行日は催告の日から約1か月後です。

当日は執行官と執行業者、債権者本人、弁護士をつけていれば弁護士が同行して強制執行に立ち会います。

相手や同居人がいたら強制的に退去させ、部屋内に荷物が残っていたら強制的に持ち出して明け渡させることが可能です。

明渡し断行の強制執行が終わったら物件がきれいな状態に戻るので、また別の人へと貸付ができる状態になります。

3.明渡し断行の強制執行にかかる期間

明渡し断行の強制執行にかかる期間は、だいたい1か月半程度です。

申立と催告までに2週間、その後明渡し断行までに1か月程度かかるので、合計で1か月半となります。

4.費用について

明渡し断行には以下のような費用がかかります。

4-1.予納金

執行官へ建物明渡し断行の強制執行を申し立てると予納金を払わねばなりません。

ケースによりますがおおむね6~10万円程度です。

4-2.執行業者の費用

執行業者に対応を依頼すると、執行業者の費用を払わねばなりません。

物件の状況や件数、執行業者にもよりますが安くても30万円程度はかかるでしょう。

高額な場合、100万円程度となるケースもあります。

同じ物件でも執行業者によって値段が変わるケースも多いので、できるだけリーズナブルな業者を探しましょう。

4-3.倉庫や鍵屋、運搬料などの費用

建物明渡し断行の強制執行では、荷物を保管するための倉庫が必要となったり鍵屋に依頼したり運搬業者が必要になったりする可能性があります。

状況に応じてこういった諸々の費用も勘案する必要があります。

5.相手方の荷物について

建物明渡し断行の強制執行を行う場合、相手方が残した荷物はどのようにするのか気になる方が多いでしょう。

きちんと強制執行の手続きをとれば、相手が所有権を有する荷物であっても合法的に処分できます。相手がその場にいたら、荷物をその場で買い取らせたり不用品を渡したりもできます。

相手がその場にいない場合にはいったん持ち帰って保管し、売却などの手続きを進めます。売れないものは相手が取りに来ると相手本人に引き取らせますし、引き取りに来なければ処分します。

なお滞納家賃の回収に役立ちそうな高価な動産(骨董品や絵画、宝飾品など)がある場合、別途動産執行の申立が必要となるケースもあります。

6.相手が抵抗する場合

明渡し断行の強制執行の際、相手が抵抗したらどこまでの行為が許されるのでしょうか?

相手を退去させるためには最低限の有形力の行使も認められます。

ただし相手が強く抵抗することが予想されるなら、事前に警察への援護を要請しておきましょう。

荷物の処分方法について不明点がある場合には、事前に弁護士へ相談して適切な対応を進めるようおすすめします。

7.同居人への効力について

借主が妻や子どもなどの同居人と暮らしている場合には、同居人に対しても強制執行の効力を及ぼさせることが可能です。

同居人が室内にいる場合、相手と同様に出て行かせられます。

8.明渡し断行の強制執行を成功させるポイント

建物明渡し断行の強制執行を成功させるには、以下の点が重要ポイントとなります。

8-1.入念に準備する

強制執行を成功させるには、しっかり準備することが重要です。

そもそも明渡し断行の強制執行がどういった手続きなのか、必要な作業内容を知り、書類の取り寄せや作成を行いましょう。

8-2.良い執行業者を選ぶ

強制執行を成功させるには、良い執行業者の選定が必須です。

依頼先によって費用も対応も大きく変わる可能性があります。

ふだんから強制執行にかかわっている弁護士であればつきあいのある執行業者を紹介できるケースが多いので、弁護士に心当たりを尋ねてみるとよいでしょう。

8-3.弁護士に依頼する

素人の方が自分ひとりで建物明渡し断行の強制執行を行うのは簡単ではありません。慣れない手続きに戸惑う方も多いでしょう。

建物明渡し断行の強制執行を成功させるには、不動産に関する法的手続きに詳しい弁護士に依頼すべきです。弁護士に頼んだらご本人はほとんど何もしなくてもよく、ほとんど待っているだけで強制執行が完了します。

迷ったときには不動産案件に力を入れている弁護士へ相談してみましょう。

9.不動産トラブルは法律事務所羅針盤の弁護士へ

千葉県市川市の法律事務所羅針盤では、不動産トラブルの解決に力を入れて取り組んでいます。家賃滞納への対応、不動産オーナー様へのサポート、マンション管理組合への助言や規約作りなどさまざまな事項に対応いたします。家賃を払わない、判決が出ても明渡しをしない悪質な借主対策はお早めにご相談ください。

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