法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。
今回は、マンション管理組合の総会運営について、招集手続、総会当日の運営方法、議事録作成など一連の流れを説明していきます。
1 マンション管理組合総会とは?
マンション管理組合の総会は、全ての区分所有者により構成される、管理組合の最高意思決定機関です。
そのため、マンション管理組合の運営においては、マンション管理における重要事項について、総会で適切な判断がなされるよう十分に配慮する必要があります。
なお、区分所有法では「集会」との名称が用いられていますが、このコラムでは標準管理規約の用語に沿って「総会」を用います。
総会には、通常総会と臨時総会の2種類があります(標準管理規約42条2項。なお、区分所有法上の集会には通常総会、臨時総会のような区別はありません)。
通常総会は、原則として新会計年度開始後2か月以内に招集する必要がある総会で、毎年1回必ず開催しなければなりません(区分所有法34条2項、標準管理規約42条3項)。
これに対し、臨時総会は、通常総会以外に必要がある場合に、いつでも招集することができる総会です(標準管理規約42条4項)。
なお、コロナ禍における通常総会の開催延期の可否などについては、当事務所HP「マンション法 コロナの影響で総会の延期は問題ない?」をご参照ください。
2 総会招集手続
(1)誰が招集するか
理事長招集が基本
マンション管理組合の総会は、理事長が招集することが基本です(標準管理規約42条3項4項)。
なお、臨時総会を招集するためには、理事会の決議も必要となります(標準管理規約42条4項)。通常総会の場合には、このような規定はありませんが、総会提出議案は理事会決議が必要とされているため(標準管理規約54条1号から4号)、通常は先行する理事会決議が必要です。
区分所有者が招集できる場合
例外として、区分所有者が総会を招集することができる場合があります。
すなわち、区分所有者の5分の1以上(総議決権数の5分の1以上)の同意を得た場合、区分所有者は、理事長に対して、臨時総会の招集を求めることができます(標準管理規約44条1項)。
この請求があったにもかかわらず、理事長が総会を招集しない場合には、請求を行った区分所有者自身が臨時総会の招集を行うことができます(標準管理規約44条2項)。
(2)招集の手続
区分所有者への通知
総会の招集は、区分所有者への通知によって行われます。
各区分所有者の通知先は、原則として区分所有者の届出先とされており、届出がない場合は、マンション内の区分所有者専有部分(区分所有者の住戸)が通知先となります(標準管理規約43条2項)。
ただし、当該マンションに居住している区分所有者に対する通知は、所定の掲示場所(マンション掲示板など)に掲示することで代替することが可能です(標準管理規約43条3項)。
なお、専有部分が共有の場合(ペアローンでマンションを購入し、夫婦がそれぞれ共有持分を持っている場合など)、招集通知は、共有者が定めた議決権行使者を宛先として通知します。議決権行使者の定めがない場合は、共有者のいずれか1人に対して通知すれば足ります(区分所有法35条2項、40条)。
賃借人がいる場合
区分所有者からマンション専有部分を賃借している賃借人などの占有者がいる場合、その占有者に影響する事項を総会で取り扱う場合は、その占有者は総会に出席して意見を述べることができます(標準管理規約45条2項)。
このような占有者がいる場合は、区分所有者に対する招集通知発送後、速やかに通知内容を所定の掲示場所(マンション掲示板など)に掲示することが必要となります(標準管理規約43条8項)。
通知すべき内容
通知が必要となる内容は、会議の日時、場所、目的です(標準管理規約43条1項)。
会議の目的が建替え決議またはマンション敷地売却決議である場合は、この他に議案の要領なども通知する必要があります(標準管理規約43条4項から6項)。
招集手続を行うタイミング
総会の招集通知は、総会2週間前までに発送することが必要です。
区分所有法上は総会の1週間前までに発送することとされていますが(区分所有法35条1項)、標準管理規約でこの期間が2週間とされているものです(標準管理規約43条1項)。
ただし、緊急を要する場合は、理事会の承認を得て、5日前までこの期間を短縮することができます(標準管理規約43条9項)。
なお、会議の目的が建替え決議またはマンション敷地売却決議である場合は、総会招集通知は総会の2か月前までに発送する必要があり、かつ、総会の1か月までに区分所有者に対する説明会を開催しなければなりません(標準管理規約43条1項、7項)。
3 当日の総会運営
(1)総会には誰が出席できる?
総会の出席資格者
マンション管理組合の総会への出席資格を有する者は、
①区分所有者
②賃借人等の占有者(利害関係がある場合、標準管理規約45条2項)
③理事会が必要と認めた者(標準管理規約45条1項)
です。
管理会社がある場合には、③の資格者として、管理会社担当者が出席していることが通常です。
代理人の出席は可能?
区分所有者は、代理人によって議決権を行使することが可能です(標準管理規約46条4項)。
代理人について、標準管理規約では、
・区分所有者の配偶者または一親等の親族(親、子など)
・同居親族
・他の区分所有者
に資格が限定されています(標準管理規約46条5項)。
代理人の資格については、マンションによって標準管理規約と異なる規定を設けている場合もあるため、実際の管理規約を確認することをお勧めします。
なお、代理人が総会に出席する場合には、理事長に委任状を提出する必要があります(標準管理規約46条5項)。
書面による議決権行使
区分所有者は、書面(議決権行使書)を提出する方法により議決権を行使することも可能です(標準管理規約46条4項)。
(2)総会の定足数は?
マンション管理組合総会の定足数は、議決権総数(通常は区分所有者総数)の半数以上です(標準管理規約47条1項)。
代理人または議決権行使書により議決権を行使する区分所有者がいる場合、その区分所有者も出席者に算入します(標準管理規約47条6項)。
(3)議長、議事録署名人の選任
総会の議長は理事長が務めます(標準管理規約42条5項)。
議長は審議に入る前に議事録署名人2名を指名します(標準管理規約49条2項)。
(4)議事手続の流れ
総会の議事手続は、通常、①報告→②議案に関する説明、質疑、討議→③採決の流れで進みます。
①報告
理事長は区分所有者にマンション管理業務の報告を行う必要があります(区分所有法43条)。
この報告は、理事長自身が行う、担当理事を指名して報告させる、管理会社担当者に行わせる、などの方法により行います。
②議案に関する説明、質疑、討議
各議案については、まず提出の趣旨説明が行われ、これを踏まえて質疑、討議が行われます。
質疑等の進め方については、議案ごとに行う方法や、全議案について趣旨説明が行われた後、一括して質疑、討議を行う方法などがあり、適宜工夫することが望まれます。
③採決
決議は出席区分所有者の議決権の過半数が賛成した場合に可決されます(標準管理規約47条2項)。
決議の方法は特に決まっておらず、挙手、拍手、書面投票など実情に応じて適宜選択します。
なお、管理規約の改正などの重要事項については、決議要件が加重され、組合員総数の4分の3以上かつ議決権総数の4分の3以上の賛成が必要となります(標準管理規約47条3項)。
(5)議事録作成
総会の議事について、議長は、議事の経過の要領及びその結果を記載した議事録を作成しなければなりません(標準管理規約49条1項)。
実務上は、総会に出席した管理会社担当者が議事録の原案を作成し、理事長などの確認を得て議事録を作成する場合が多いと思われます。
議事録には、議長及び議事録書面人2名が署名押印し、理事長が完成した議事録を保管します(標準管理規約49条2項)。
なお、理事長は、議事録の保管場所を掲示の上、区分所有者または利害関係者から書面による閲覧請求があった場合は、閲覧させなければなりません(標準管理規約49条3項4項)。
4 書面による決議など
コロナ禍の時期には、感染症対策に配慮しながら総会を行う必要があり、総会運営に工夫が求められます。
この点について、法律上は、区分所有者全員の承諾があるときは、総会を開催せず、書面による決議を行うことが可能となるなど(区分所有法45条、標準管理規約50条)、一定の工夫を行うことが可能です。
詳細は当事務所HP「マンション法 コロナに留意しながら総会を開催する場合の工夫」をご参照ください。