法定相続情報一覧図とは?作成方法、留意点、費用など

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。

このコラムでは、法定相続情報一覧図とは何か?という基本的なことから、その作成方法、作成の際の留意点、費用などについて説明します。

千葉県市川市の相続に強い弁護士 本田真郷

【この記事を書いた弁護士】
弁護士 本田真郷(ほんだまさと)
「お客様の根本問題を解決する」がモットー。15年以上弁護士として活躍する中で多くの相続問題の解決に携わる。相続に関しての不安を解決してもらう無料相続相談会を事務所にて開催中。

目次

1 法定相続情報一覧図とは?

引用:法務局HP

法定相続情報一覧図とは、法務局の法定相続情報証明制度に基づき発行される書面で、相続の場面で発生する様々な手続の際の提出書類を簡易化するために主に利用されます。

法定相続情報証明制度とは、亡くなった方(被相続人)と相続人たちの関係を法務局に証明してもらう制度です。

法定相続情報一覧図は、この亡くなった方と相続人の関係を書いた家系図のような書類に法務局のお墨付きをもらったものになります(法務局からは「当局保管に係る法定相続情報一覧図の写しである」旨の認証文言を付してもらいます)。

相続手続の際は、金融機関手続、不動産登記手続、相続税申告手続など様々な場面で亡くなった方と、相続人の関係を証明することが求められます。

そのたびに、毎回亡くなった方と相続人の関係を証明する全ての戸籍謄本を提出するのはとても面倒です。

この相続法定相続情報一覧図があれば、関係性が証明できるので戸籍謄本の提出も不要になります。

平成29年5月から、法定相続情報証明制度の運用が開始され、法務局が認証した法定相続情報一覧図を提出する場合は、戸籍謄本等の提出の省略が可能となりました。

2 どのような場合に法定相続情報一覧図を作成すべきか?

法定相続情報一覧図は、相続手続の度にいちいち戸籍謄本等を提出しなければならない煩雑さを回避するための制度です。

なので、戸籍謄本さえ毎回取れば、相続情報一覧図自体は作成が必須というものではありません。

相続関係の確定に必要な戸籍謄本等の通数が少なかったり、戸籍謄本等の提出が求められる相続手続が少ない場合などは、わざわざ法定相続情報一覧図を作成しなくても問題ないです。

逆に言えば、

・相続関係の確定に必要な戸籍謄本等の通数が多く、戸籍謄本等の管理、提出が大変である場合
・戸籍謄本等の提出が求められる相続手続が多い場合(特に同時並行で複数の相続手続を進めていく場合など)

などは法定相続情報一覧図を作成するメリットが大きいものと言えます。

当事務所では、このような観点から、相続手続の全体像を想定した上、必要に応じて法定相続情報一覧図作成の是非をご案内しています。

3 法定相続情報一覧図の作成方法

(1)まずは必要書類を収集する

まずは法定相続情報一覧図の作成に必要となる書類を収集します。
主な必要書類は以下のとおりです。

①被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本等

②被相続人(亡くなった方)の住民票の除票または戸籍の附票

③相続人全員の戸籍謄本(代襲相続の場合や兄弟姉妹が相続人となる場合など、相続人の確定に必要となる戸籍謄本等がある場合は、その戸籍謄本等も必要書類となります)

※戸籍謄本は本籍地の役所に出向いて申請するか、郵送で取り寄せることもできます。もしくは、マイナンバーカード・住民基本台帳があれば、コンビニのコピー機で発行できる自治体もあります。

④申出人の氏名、住所を確認できる公的書類
※運転免許証表裏両面のコピー、マイナンバーカード表面のコピー、住民票の写しなど
※コピーを提出する場合は、申出人による「原本に相違がない」旨の記載及び記名押印が必要

⑤相続人の住民票写しまたは戸籍の附票(法定相続情報一覧図に住所を記載しない場合は不要)

⑥委任状(代理人が申出手続を行う場合)

⑦代理人の資格を証明する書類(弁護士の場合には弁護士会身分証明書コピーなど)
※コピーを提出する場合は、「原本に相違がない」旨記載の上、記名押印が必要。

(2)法定相続情報一覧図の作成

引用:法務局HP

必要書類が揃ったら、提出する法定相続情報一覧図を作成します。

法定相続情報一覧図の様式については、法務局HP「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」からダウンロードすることができます。

法定相続情報一覧図は、裁判手続や登記手続で作成する相続関係説明図と類似していますが、以下の点に特徴、留意点があります。

・氏名等を記載できるのは、被相続人(亡くなった方)と相続人のみです。例えば、被相続人が亡くなるさらに前に亡くなってしまった推定相続人(もし生きていれば相続をするはずだった方)の氏名等を記載することはできません。
・相続放棄をした相続人は、法定相続情報一覧図に氏名等を記載します。
・代襲相続人(本来相続するはずだった人が亡くなり、代わりに相続権を得た子や孫)がいる場合、被代襲者の氏名は記載せず、「被代襲者(○年○月○日死亡)」等の記載をします。
・相続人の住所の記載は任意ですが、住所を記載しておくと、相続登記等の申請を行う場合に、相続人の住民票写し等の添付を省略することが可能です。
・続柄について、単に「子」等と記載することも可能ですが、相続税申告書の添付資料として利用する場合には、実子、養子のいずれであるかを明らかに記載しておく必要があります。そのため、「長男」「長女」「養子」など戸籍謄本に記載されている続柄を具体的に記載しておいた方が利用範囲は広がります。

法務局のHPには、よくあるパターンの法定相続情報一覧図の書き方やサンプルなどがあります。もちろん、それらの解説で書き方がわかればご自身で作成頂いて問題はないです。ただ、場合によっては自分のパターンはどう書いたらいいの?とわからないこともあるかと思います。その場合は、相続手続きの相談をされている弁護士や司法書士に相談されると作成を代行してもらうこともできます。

(3)法務局への申し出

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の作成

必要書類の収集及び提出する法定相続情報一覧図の作成が完了したら、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書を作成します。
申出書の様式は、法務局HP「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」の「STEP3」部分からダウンロードすることができます。
なお、代理人名義で申し出を行う場合、申出人本人の押印は不要です。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出先法務局

申出先の法務局は、以下の法務局の中から選択することができます。

・被相続人(亡くなった方)の本籍地を管轄する法務局
・被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する法務局
・申出人の住所地を管轄する法務局
・被相続人名義の不動産所在地を管轄する法務局

法務局の管轄については、法務局HP「管轄のご案内」からご確認ください。

申出手続

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出は、以下の書類を管轄法務局に提出して行います。

・法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書

・必要書類①~⑦(④~⑦は必要に応じて)

・返信用レターパック(郵送申出の場合)

なお、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出は、法務局窓口での提出のほか、郵送で行うことも可能です。

4 作成期間

法務局に対して法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出を行ってから、交付された法定相続情報一覧図が実際に手元に届くまでの期間は概ね1,2週間程度が標準です。

当事務所が最近代理人として申出を行ったケースでは以下のスケジュールでした。

ケース1
1月18日 申出書を法務局へ発送
1月25日 法定相続情報一覧図を受領

ケース2
2月4日 申出書を法務局へ発送
2月9日 法務局から追完書類の提出指示(即日送付)
2月16日 法定相続情報一覧図を受領

手続きが差し迫っている場合は、スケジュールに余裕をもって手続きを行うようにしてください。

5 費用

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の費用は無料です(戸籍謄本等取得費用や代理人選任に伴う費用は別途生じます)。

また、法定相続情報一覧図の作成を弁護士や司法書士などの専門家に依頼した場合は、概ね数万円程度の費用が発生する場合が多いです。

6 再交付

法定相続情報一覧図は、申出日の翌年から起算して5年間保存され、保存期間内であれば、再交付を受けることができます。

相続手続きの全体像は下記の記事でも解説しています

はじめての方にとって相続手続きは、複雑に感じることが多いと思います。

下記の記事では相続手続きの全体像を初心者の方でもわかりやすいよう簡単にまとめておりますので、ぜひ参考にしてください。

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