区分所有者の迷惑行為に対して管理組合が取り得る手段は?

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。

マンションの区分所有者(住民)が迷惑行為を働いている場合、他の区分所有者の生活が脅かされてしまいます。

この場合、管理組合が主導して、迷惑行為をやめさせなければなりません。

区分所有者の迷惑行為に対しては、区分所有法※によって、管理組合が取り得る対策が規定されています。

必要に応じて弁護士に相談をして、管理組合として適切な対策を講じましょう。

この記事では、区分所有者の迷惑行為に対して、管理組合が取り得る対抗策を中心に解説します。

※正式名称:建物の区分所有等に関する法律

1. 「区分所有者の共同の利益に反する行為」は違法

マンションの各区分所有者は、同じマンション内での共同生活を営んでいる以上、他の区分所有者に迷惑をかけてはいけないのは当然の道理です。

そのため、区分所有法6条1項では、区分所有者が建物を管理・使用するに当たって、「区分所有者の共同の利益に反する行為」(共同利益背反行為)を禁止しています。

共同利益背反行為にはさまざまなパターンが考えられますが、一例としては以下のとおりです。

・他の区分所有者の迷惑となる動物を飼育する行為

・共用部分を独占的に使用して、他の区分所有者の利用を妨げる行為

・騒音や悪臭を発する行為

2. 区分所有者の迷惑行為への対処法は?

区分所有者がマンション内で迷惑行為を働いている場合、管理組合としては、法的措置を含めた対応を検討する必要があります。

管理組合の取り得る法律上の対処法としては、具体的にどのようなものが考えられるのでしょうか。

2-1. 管理組合による対処の必要性

迷惑行為と聞くと、真っ先に思い浮かぶ法的請求は損害賠償請求ではないでしょうか。

たしかに、区分所有者の迷惑行為によって、他の区分所有者が損害を被っている場合、その区分所有者は、迷惑行為を働く区分所有者に対して、個別に損害賠償請求を行うことが可能です。

しかし、区分所有者個人が個々に法的手続を行うことは容易ではありませんし、管理組合としても共同生活維持のため迷惑行為の是正検討を望まれる立場にあります。

そのため、迷惑行為に対しては、管理組合として対処を検討することが必要となります。管理組合としての対処方法としては、以下で解説する区分所有法上の各請求がメインになります。

2-2. 対処法①|行為の停止等の請求

2-2-1. 「行為の停止等の請求」の概要

区分所有者によって共同利益背反行為が行われた場合、またはそのおそれがある場合には、管理組合は、区分所有者の共同の利益を守るため、行為者に対して以下の請求を行うことが認められています(区分所有法57条1項)。

・共同利益背反行為を停止すること

・共同利益背反行為の結果を除去すること

・共同利益背反行為を予防するため必要な措置を執ること

管理組合が上記の請求について訴訟を提起するためには、管理組合総会(集会)における決議が必要です(同条2項)。

決議要件は、区分所有法の原則上は、区分所有者および議決権の各過半数とされています(同法39条1項)。

ただし、管理規約によって決議要件について別段の定めを置くことが認められており、多くの管理組合では、総会に出席した区分所有者の議決権の過半数によって決議を行うことができるようになっています(管理組合規約47条2項参照)。

管理組合総会において、行為の停止等の請求について訴訟の提起が決議された場合、決議において指定された区分所有者が代表して訴訟を提起することになります(同法57条3項)。

2-2-2. 「行為の停止等の請求」に関する裁判例

・東京高裁平成7年2月28日判決
共用部分であるピロティ部分に、外壁を設置して物置にしていた事案で、外壁の撤去請求と、当該部分の明渡請求が認められました。

・東京地裁平成3年3月8日判決
ガス風呂釜を設置するために、共用部分である壁柱に穴をあけて配管をした事案で、復旧工事が命じられました。

2-3. 対処法②|使用禁止の請求

2-3-1. 「使用禁止の請求」の概要

共同利益背反行為によって生じる他の区分所有者の生活上の障害が著しく、「行為の停止等の請求」によっては共同生活の維持を図ることが困難な場合、管理組合は行為者に対して、一定期間の専有部分の使用禁止を請求できます(区分所有法58条1項)。

専有部分の使用禁止は、本来区分所有者が有する所有権を制限する強力な措置です。

そのため以下の点について、「行為の停止等の請求」よりも要件が厳しくなっています。

・請求の方法が訴訟に限定されます(同項)。

・訴訟の提起には、区分所有者及び議決権の4分の3以上の賛成による管理組合総会決議が必要です(同条2項)。

・管理組合総会決議を行う場合には、あらかじめ行為者に対して弁明の機会を与えなければなりません(同条3項)。

なお、「使用禁止の請求」を行うには、「行為の停止等の請求」を先行させる必要はありません。

つまり、「行為の停止等の請求」によっては問題を実効的に解決できないと判断される場合には、いきなり「使用禁止の請求」を行うことも可能です。

2-3-2. 「使用禁止の請求」に関する裁判例

・福岡地裁昭和62年5月19日判決
各地で抗争を繰り返す暴力団が、専有部分を事実上本拠地の事務所として使用していた事案で、3年間の使用禁止が認められました。

・大阪高裁平成14年5月16日判決
マンション管理費の滞納を理由に使用禁止の請求が行われた事案において、代替手段による解決があり得ることや、使用禁止の請求が管理費滞納の解消とは関連性がないことなどを理由として、請求が棄却されました。

2-4. 対処法③|区分所有権の競売の請求

2-4-1. 「区分所有権の競売の請求」の概要

上記の各対処法のいずれによっても、区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な場合、管理組合は最終手段として、行為者の区分所有権を競売するよう請求できます(区分所有法59条1項)。

「区分所有権の競売の請求」は、行為者の所有権を強制的に失わせる強力な措置です。

したがって、「使用禁止の請求」と同様に、以下の厳格な要件が課されています。

・請求の方法が訴訟に限定されます(同項)。

・訴訟の提起には、区分所有者及び議決権の4分の3以上の賛成による管理組合総会決議が必要です(同条2項、同法58条2項)。

・管理組合総会決議を行う場合には、あらかじめ行為者に対して弁明の機会を与えなければなりません(同法59条2項、58条3項)。

「区分所有権の競売の請求」が判決で認められた場合、判決が確定した日から6か月以内に、競売の申立てを行う必要があります(同法59条3項)。

2-4-2. 「区分所有権の競売の請求」に関する裁判例

・札幌地裁昭和61年2月18日判決
暴力団が専有部分を組事務所として使用していたため、頻繁に外部の暴力団関係者が出入りし、かつマンション内で他の暴力団組員との乱闘・抗争が発生していた事案において、区分所有権の競売の請求が認められました。

3. 区分所有者の迷惑行為への対処は弁護士に相談を

上記のように、迷惑行為を働く区分所有者に対しては、区分所有法に基づき、各種の強力な対抗策を取ることができます。

ただし、その分管理組合に課される要件は厳しいため、請求要件を満たしていることを説得的に論証できるようにしておかなければなりません。

さらに、他の区分所有者の間で合意形成を図るためには、管理組合としての意思決定プロセスが適切な形になっているかどうかも重要な観点です。

弁護士にご相談いただければ、上記の各ポイントを踏まえたうえで、マンション管理上の問題を円滑に解決するためのサポートをご提供いたします。

区分所有者の迷惑行為にお悩みの管理会社・他の区分所有者の方は、一度弁護士にご相談ください。

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