マンションの管理費滞納への対応「払えないなら仕方ない」ではない理由を弁護士が解説

この記事のポイント(要約)
  • マンションの管理費を払うことは、区分所有者にとって最も基本的な義務です。そのため、相手の支払い能力に関わらず、まず然るべき督促を行うのが基本になります。
  • 個人間の借金でいう「払えないなら仕方ない」という発想は、管理費には当てはまりません。理由は「組合員みんなの公平」を守る必要があるからです。
  • 滞納を放置すると、時効や、他の住民への説明責任といったリスクが生じます。弁護士に相談する目安は、金額の大小よりも「滞納が続いている期間」です。

マンションの管理組合で理事を務めると、頭を悩ませることの一つが「管理費を払わない住民」への対応ではないでしょうか。

この記事では、管理費の滞納にどう向き合えばよいのか、弁護士の視点から基本の考え方を解説します。

目次

管理費を払えない住民に、督促しなくてもいい?

「相手も生活が苦しいのかもしれない」「あまり厳しく言うのも気が引ける」——そう感じて対応を後回しにしてしまうのは、とても自然な気持ちです。

しかし、マンションの管理費については、この「払えないなら仕方ない」という考え方が当てはまりません。結論から言えば、支払い能力があるかどうかに関わらず、まずは然るべき督促を行うのが基本です。

むしろ、対応を後回しにすることで、管理組合や理事の方ご自身が困った立場に立たされることもあります。なぜそう言えるのか、順番に見ていきましょう。

なぜマンションの管理費は「普通の借金」と違うの?

個人間の貸し借りのような普通の借金であれば、相手に返す力がなければ、現実的に諦めざるを得ない場面もあります。

しかし、管理費は性質が違います。マンションの清掃、設備の点検、将来の大規模修繕——建物を維持していくための費用を、部屋の所有者(区分所有者)みんなで分担するもの。管理費を支払うことは、区分所有者にとって最も基本的な義務です。

ここで大切になるのが「公平性」です。

一人でも「払わなくていい」を認めてしまうと、きちんと支払っている他の住民との間に、不公平が生まれてしまいます。

だからこそ、管理費の滞納は「その人だけの問題」ではなく、「マンション全体の公平性に関わる問題」として捉える必要があるのです。

滞納対応で、弁護士がまず確認することは?

支払い能力に関わらず督促するのが基本、とはいえ、機械的に進めるわけではありません。

滞納には、何かしらの理由があるはずです。

弁護士がまず確認するのは、次の2点です。

  • なぜ払えない(あるいは払わない)のか、その理由
  • その理由が、督促をしないことを正当化できるほどのものかどうか

この2点を確認し、特段の事情がなければ、まずは督促に進む、という考え方をとります。「相手の事情を無視して厳しく取り立てる」のではなく、「組合員みんなの公平を守るために、組合として果たすべき責任を果たす」——これが出発点です。

管理費の滞納を放置すると、何が問題になる?

「まだ少額だから、もう少し様子を見よう」と後回しにしがちですが、放置には2つのリスクがあります。

1つ目は「時効」です。 管理費を請求できる権利は、一定期間(基本的には5年)放置すると、法律上請求できなくなってしまうおそれがあります。

2つ目は「他の住民への説明」です。 滞納が大きく膨らんでから対応すると、他の組合員から「なぜ、そんな金額になるまで放っておいたのか」と、理事会や管理組合が責められかねません。早めに動くことは、対応する側の立場を守ることにもつながります。

なお、「本人にお金がなさそうだから回収できないのでは」と心配される必要は、実はあまりありません。

滞納している方も、そのマンションの部屋という財産を持っています。

最終的には、その部屋を売却して新しい所有者に請求する方法も残されています。

(詳しくは次の記事をご覧ください)

滞納管理費の金額が大きくなるまで様子を見るべき?

いいえ、待つ必要はありません。

前述のとおり、放置は時効や説明責任のリスクにつながります。

弁護士に相談するかどうかの目安としても、大切なのは金額の大小ではなく「どれくらいの期間、滞納が続いているか」です。

相当期間にわたって滞納が続いている場合は、金額がまだ小さくても、対応を検討するタイミングと言えます。

やむを得ない事情がある滞納者にも、厳しく対応するの?

ここまで「まず督促を」とお伝えしてきましたが、すべてを一律に、機械的に進めるわけではありません。

やむを得ない事情があって一時的に支払えない、という方もいらっしゃいます。相応の配慮をしても他の組合員との公平を大きく損なわないような場合には、いきなり厳しい手段に進むのではなく、状況に応じた柔軟な対応を検討することもあります。

というのも、弁護士が対応に入ると、多くのケースで弁護士費用も含めて滞納者に請求することになり、滞納している方の負担がかえって重くなります。だからこそ、事情のある誠実な滞納者に対しては、弁護士が関与するタイミングをあえて慎重に考える、という配慮もあり得るのです。

「公平性を守ること」と「事情のある方への配慮」。

この両方のバランスを見ながら対応方針を決めていくのが、実務の現場です。

管理組合だけで対応できる? 弁護士に相談する目安は?

最初の督促は、ルールに基づいて記録をきちんと残しながらであれば、管理組合だけでも対応できます。

大切なのは、理事個人の判断ではなく、組合として、段階を踏んで進めることです。

一方で、次のような場合は、早めに弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

  • 滞納が相当期間続いている(金額の大小より「期間」が目安)
  • 相手と連絡が取れない、話し合いに応じてもらえない

「これはうちの組合だけで対応すべきことなのか、専門家に相談すべきことなのか」——その判断自体に迷われたときは、その見極めだけでも弁護士にお尋ねいただけます。

よくある質問(FAQ)

Q. 管理費を払えない住民には、督促しない方がいいですか?
A. いいえ。管理費は区分所有者の基本的な義務であり、組合員間の公平を守るため、支払い能力に関わらず、まずは然るべき督促を行うのが基本です。ただし、やむを得ない事情がある場合には、状況に応じた配慮を検討することもあります。

Q. 管理費の滞納に時効はありますか?
A. はい。管理費を請求できる権利は、一定期間放置すると、法律上請求できなくなってしまうおそれがあります。放置せず、早めに対応することが大切です。

Q. 管理費の滞納は、いくらになったら弁護士に相談すべきですか?
A. 金額よりも「滞納が続いている期間」が目安です。相当期間にわたって滞納が続いている場合は、金額がまだ小さくても、相談を検討するタイミングです。

Q. 滞納している住民が引っ越したら、もう回収できませんか?
A. いいえ、諦める必要はありません。部屋が売却されても、新しい所有者に滞納分を請求できる仕組みがあります。詳しくは別の記事で解説しています。

この記事を書いた人

千葉県の市川市の法律事務所 羅針盤の弁護士。「お客様の根本問題を解決する」がモットー。複雑な法律の知識についてわかりやすく解説します。

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