マンション管理費の滞納、弁護士に相談するタイミングは?|金額より「期間」で判断する理由を弁護士が解説

この記事のポイント
  • 管理費の滞納を弁護士に相談する目安は、金額の大きさよりも「督促をしても、相当の期間支払いがない状態が続いているか」です。
  • 「相当の期間」に法律上の決まりはありませんが、管理会社による督促期間が過ぎたとき、段階を踏んで督促しても支払いや連絡がないときなどが、ひとつの目安になります。
  • 督促は管理組合だけでも行えますが、理事個人の判断ではなく、一定のルールにもとづいて組織的に進めることが大切です。
  • 多くのマンションの管理規約では、弁護士費用を滞納者に請求できる定めがあります。一方で、やむを得ない事情のある滞納者には、弁護士に依頼する時期を慎重に考えることもあります。

管理費の滞納が続くと、理事の方からは「いつ弁護士に頼めばよいのか分からない」「まだ早いのではないか」というご相談をよくいただきます。この記事では、管理組合の立場から、弁護士に相談するタイミングの考え方を解説します。

目次

管理費の滞納は、いくらになったら弁護士に相談すべき?

「滞納額が◯万円を超えたら弁護士へ」という、はっきりした金額の基準はありません。

目安として大切なのは、金額よりも「期間」です。

管理組合から督促をしても、「相当の期間」にわたって支払いがない状態が続いているかどうか。

ここが、弁護士への相談を考える分かれ目になります。

なぜ「金額」ではなく「期間」で判断するの?

滞納が何か月も続けば、金額は自然と大きくなっていきます。

つまり、金額の大きさは「長く続いた結果」にすぎず、本当に見るべきなのは「督促をしても支払いが続かない状態が、どれくらい続いているか」です。

また、期間を目安にする理由は、ほかにもあります。

ひとつは、時効の問題です。

管理費を請求する権利は、長い間(原則として5年)そのままにしておくと、法律上請求できなくなるおそれがあります。

もうひとつは、ほかの組合員への説明です。

滞納が長く続き、金額が大きくなってから対応を始めると、「なぜそこまで放っておいたのか」と、理事会が説明を求められることになりかねません。期間を目安に早めに方針を決めておくことは、理事会の立場を守ることにもつながります。

「相当の期間」とは、どのくらいを考えればいい?

「相当の期間」が何か月なのか、法律で決まっているわけではありません。

マンションの規模や滞納の事情によっても変わります。

とはいえ、何の目安もないと判断に迷ってしまいます。実務では、次のような時点が、「管理組合として次の対応を考える」タイミングになります。

1. 管理会社による督促期間が過ぎたとき

管理会社に管理を任せているマンションでは、管理委託契約の中で「支払期限から◯か月の間は、管理会社が電話や督促状などで督促する」と定めているのが一般的です。この期間を過ぎても支払いがない場合、管理会社の督促は終わり、その後は管理組合が自ら対応することになります。 つまり、この期間が過ぎた時点は、管理組合として次の対応を考える自然な節目です。期間はマンションごとに異なりますので、お手元の管理委託契約書をご確認ください。

2. 段階を踏んで督促しても、支払いや連絡がないとき

電話や督促状、内容証明郵便(いつ、どんな内容を送ったかが記録に残る郵便)など、段階を踏んで督促しても、支払いも返事もない。

このような場合は、期間の長さにかかわらず、弁護士への相談を検討するタイミングといえます。

3. 管理組合の細則などで決めている期間に達したとき

「滞納が◯か月続いたら、理事会で法的な手続きを検討する」といった決まりを、細則などで定めているマンションもあります。その場合は、その期間がひとつの目安になります。

こうした決まりがない場合は、あらかじめ定めておくことも、理事が交代しても対応を続けやすくする方法の一つです。

なお、先ほどお伝えした時効の期間(原則5年)は、あくまで「これを過ぎると請求できなくなるおそれがある」という限界です。そこまで待ってよいという意味ではありませんので、ご注意ください。

相談の前に、管理組合で確認しておきたいことは?

弁護士に相談する前に、次の点を整理しておくと、その後の話がスムーズに進みます。

  • 滞納の理由
    なぜ支払われていないのか。分かっている範囲で構いません。
  • その理由が、督促を控えるべき事情にあたるか
    多くの場合、特別な事情がない限りは督促を進めるのが基本です。
  • これまでの督促の記録
    いつ、どのような方法で督促したか。書面の控えなどがあれば、あわせてご用意ください。
  • 管理規約・管理委託契約書
    督促や費用の扱い、管理会社の督促期間を確認するために使います。

特に督促の記録は、その後の手続きで大切な資料になります。

記録が十分でなくても相談は可能ですので、ある範囲でお持ちいただければ大丈夫です。

管理組合だけで督促を続けてもいい?

はい、最初の督促は管理組合だけでも行えます。

ただし、進め方には注意が必要です。

督促は、管理組合が果たすべき責任として行うものです。

そのため、理事の方が個人の判断でその場その場の対応をするのではなく、一定のルールにもとづいて、組織として進めることが大切です。

特に気をつけたいのが、ルールにもとづかずに融通をきかせすぎることです。

一部の滞納者にだけ特別な扱いをすると、きちんと支払っているほかの組合員から不満が出るおそれがあります。

また、役員としての務めを十分に果たしていないと見られることにもつながりかねません。

「どの段階で、どのような督促をするか」を組合として決めておくと、理事が交代しても同じ対応を続けやすくなります。こうした督促のルールづくりから弁護士に相談いただくこともできます。

弁護士に依頼すると、費用は管理組合の負担になる?

必ずしも、管理組合がすべてを負担するとは限りません。

多くのマンションの管理規約では、国がひな形として示している「標準管理規約」にならい、滞納があった場合に、弁護士費用なども含めて滞納者に請求できる定めが置かれています。

ただし、実際に請求できるかどうか、どこまで請求できるかは、それぞれのマンションの管理規約の内容によります。まずはお手元の管理規約をご確認いただくか、弁護士にご相談ください。

事情のある滞納者でも、弁護士に依頼すべき?

一律に「すぐ弁護士へ」というわけではありません。

前の項目でお伝えしたとおり、弁護士が対応に入ると、弁護士費用も含めて滞納者に請求することになる場合が多く、滞納者の負担は重くなります。

そのため、やむを得ない事情があって一時的に支払えないなど、誠実に対応している方で、相応の配慮をしてもほかの組合員との公平を大きく損なわない場合には、弁護士に依頼する時期を慎重に考えることもあります。

もっとも、どこまで配慮してよいかの判断は、組合員全体の公平とも関わるため、簡単ではありません。

判断に迷う場合は、その点だけでも弁護士にご相談ください。

弁護士への相談を検討したいサインは?

次のような状況になったら、弁護士への相談を検討するタイミングです。

弁護士に相談する目安
  • 管理会社による督促期間が過ぎても、支払いがない
  • 督促状や内容証明郵便で督促しても、支払いや連絡がない
  • 滞納者と連絡が取れない、または話し合いに応じてもらえない
  • 滞納者との間で、感情的な対立が生じている
  • 督促の進め方や、組合としてのルールづくりに迷っている
  • 事情のある滞納者に、どこまで配慮してよいか判断に迷っている

判断に迷ったら、「相談すべきかどうか」かだけでも大丈夫です

管理費の滞納は、管理組合だけでも対応を始めることができます。

ただ、「このまま組合で続けてよいのか」「弁護士に依頼すべき段階なのか」という判断は、状況によって異なり、迷われることも多いと思います。

そのようなときは、「今、弁護士に依頼すべき段階かどうか」という判断だけでもご相談いただけます。

もちろん、無理に依頼を勧めたりすることはありません。

早めに方針を整理しておくことが、滞納の解決にも、理事会の負担を軽くすることにもつながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 管理費の滞納は、いくらになったら弁護士に相談すべきですか?

A. はっきりした金額の基準はありません。金額よりも、督促をしても相当の期間支払いがない状態が続いているかどうかが、相談を考える目安になります。

Q. 「相当の期間」とは、何か月くらいですか?

A. 法律上の決まりはありません。目安としては、管理会社による督促期間(管理委託契約で定めた期間)が過ぎても支払いがないときや、督促状・内容証明郵便などで段階を踏んで督促しても支払いや連絡がないときが、弁護士への相談を検討するタイミングです。

Q. 弁護士に相談する前に、何を準備すればよいですか?

A. 滞納の理由(分かる範囲で)、これまでの督促の記録、管理規約、管理委託契約書をご用意いただくと、相談がスムーズです。記録が十分でなくても相談は可能です。

Q. 弁護士費用は、管理組合が負担しなければなりませんか?

A. 多くのマンションの管理規約では、弁護士費用なども含めて滞納者に請求できる定めがあります。ただし内容はマンションごとに異なるため、管理規約をご確認いただくか、弁護士にご相談ください。

Q. 事情があって支払えない滞納者にも、弁護士に依頼すべきですか?

A. 一律ではありません。弁護士が入ると滞納者の負担が重くなるため、やむを得ない事情があり、配慮してもほかの組合員との公平を大きく損なわない場合は、依頼の時期を慎重に考えることもあります。判断に迷う場合はご相談ください。

この記事を書いた人

千葉県の市川市の法律事務所 羅針盤の弁護士。「お客様の根本問題を解決する」がモットー。複雑な法律の知識についてわかりやすく解説します。

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