【弁護士が解説】相続トラブル12パターンと対策方法

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。

相続が発生すると、相続人同士でトラブルになってしまうケースが非常によくあります。

当事務所でもこれまで、千葉県内のたくさんのご家庭の方から相続トラブルについてのご相談をお受けしてきました。

遺産の額が多くなくてもトラブルは発生しますし、親の生前は仲の良かった兄弟が骨肉の争いを繰り広げてしまうケースも少なくありません。ごく一般的なご家庭であっても、相続争いは他人事ではないのです。

この記事では相続トラブルが特に発生しやすいパターンや、その対処方法をお伝えします。

相続のトラブルを予防したい方、現在抱えている相続関連のトラブル解決のヒントを得たい方はぜひ参考にしてください。

目次

相続トラブル1.相続する遺産の中に不動産が含まれている

不動産は価値を金額にするのが難しい

遺産の中に不動産が含まれていると、トラブルにつながりやすいので注意すべきです。

不動産の分け方はさまざまで評価方法も一律ではなく、相続人間で遺産分割方法についての意見が一致しにくい傾向があるためです。不動産が1つしかない場合、相続人間で取り合い(または押し付け合い)になってしまうケースもよくあります。

投資用の物件が遺された場合でも、相続人間で共有にするのか売却して分けるのかなどが問題になりやすく、賃料を特定の相続人が独占してしまうトラブルも発生します。

例えば、3人兄弟で一軒のアパートを相続するようなパターンです。建物自体は一つしか無いので、3人で仲良くわけるということはできません。もしアパートを長男が相続すると決まった場合、次男、三男には、アパートの代わりになるような、現金などの支払いを求められることが通常です。
しかし、その支払額の計算はそれほど簡単ではありません。不動産の評価方法が一義的ではないためです。極端な話ですと、Aという不動産会社がアパートの価値を3000万円と計算しても、Bという不動産会社は3300万円と計算するなど場合によっては数百万円以上の差がでることもあります。

長男としては、できるだけ支払いを減らすため、3000万円という評価額を採用したくても、次男・三男はそれを認めないということもあり得ます。

このように、不動産はその価値を正確に金銭に換算することが難しいため、相続トラブルの原因になることがあります。

不動産を相続する場合のトラブル防止方法

不動産をめぐる相続トラブルを防止するには、被相続人の生前に遺言書を作成して、誰に不動産を相続させるべきか、不動産を相続できない相続人にはどのように計算して金銭を支払うのか(代償金)、といったことを指定しましょう。あるいは売却して現金を分けるよう指定する換価分割も指定できます。

遺言書が無く現在、トラブルの渦中にある場合は、いかに落とし所をみつけるかが重要になります。複数の不動産会社に査定をしてもらい、その平均で金額をだすというルールを作ったりということも考えられます。トラブルが重症化し、話し合いができる状態にない場合は、弁護士を通して裁判所に希望を出すことで、不動産鑑定士などの専門家が調停委員などの立場で関与してくれることもあります。

相続トラブル2.相続財産が実家しかないのに複数の相続人がいる

なぜ実家はきれいに分けることができないので相続が難しい

相続財産が実家しかないにもかかわらず相続人が複数いると、トラブルが生じるケースが多々あります。

原因は、実家を相続した相続人が、他の相続人に対して実家の代わりとなるような金銭を支払う能力が無かったり、支払いを拒否することがあるからです。

例えば、3人兄弟の場合、親と同居していた長男が1500万円の実家を相続したとします。そのとき、次男・三男は実家をもらえない代わりに実家の三分の1の価値500万円に相当する現金を受け取る権利をもっています。

しかし、長男は元々住んでいた家をもらっただけなので、支払いを拒絶したりいきなり多額の現金を支払う能力がないこともあります。そうすると、遺産分割協議が成立しなくなってしまうのです。

このように、「うちには特に大きな財産はなく実家だけだから、相続トラブルなんて起こらないだろう」と考えていた家族が揉めてしまうということがあります。

実家を相続する場合のトラブル防止方法

遺産がほぼ実家しかない場合にも、必ず遺言書を作成しておくべきです。

遺言書の中で、誰に実家を相続させるのかということや、他の兄弟に金銭(代償金)を支払うのかということも含めて指定しておくことでトラブルの予防ができます。

もしくは、実家をもらえない兄弟に支払う現金などをあらかじめ準備しておくこともトラブル予防に効果的です。

遺言書が無く、すでにトラブルになってしまっている場合、話し合いが成立しないと最終的には遺産分割審判で家の競売命令が出てしまい、相場より低い金額で実家を失うという結果にもなりかねません。

相続の代償金を支払えるように相続手続の時期を先送りしたり、すこしでも高い金額を受け取るために早めの売却を促すということも場合によってはあり得ます。

相続人同士で落とし所をみつけることが難しい場合は、弁護士など専門家への早期の相談が解決を早めます。

相続トラブル3.亡くなった方(被相続人)が再婚している

突然、前妻の子供が現れ、相続権を主張することも

被相続人が再婚していて、前婚の際の子どもと死亡時の家族がいる場合にも相続トラブルが発生しやすいので要注意です。

前婚の際の子どもには、死亡時の家族の子どもと同等の法定相続分が認められます。

死亡時の家族からすると、生前にほとんど交流のなかった前婚の子どもには遺産を渡したくないと考えるでしょう。一方、前婚の子どもとしては「当然遺産を受け取れる権利がある」と考えるので、お互いの考えが合わずにトラブルになってしまいます。

亡くなった方(被相続人)が再婚している際の相続トラブル防止方法

再婚していて前婚の際の子どもがいる方は、相続トラブルを防ぐために必ず遺言書を作成しておくことがトラブル防止には効果的です。

前婚の際の子どもにも、現在の家族の子どもと同様の財産を相続する権利(遺留分)が認められるので、紛争防止のためには、できるだけ遺留分を侵害しないよう配慮しなければなりません。

現在の家族としては、相続の際にはじめて、前婚の子どもの存在を知ることもあります。遺言があれば相手の承諾がなくとも相続を進められることもありますが、遺言が無い場合は、お互いが納得できる落とし所を相談していく必要があります。

相続トラブル4.内縁の配偶者がいる

内縁の配偶者にはそもそも相続権が無い

配偶者と籍を入れず内縁状態にしている方も、相続トラブルに注意が必要です。

そもそも内縁の配偶者には遺産相続権がありません。

以前の配偶者との間に子どもがいたら、その子どもがすべての遺産を相続します。

すると子どもが内縁の配偶者に対し、家からの退去や預貯金の引き渡しなどを求めて内縁の配偶者の生活が脅かされる可能性があります。

子どもなどの相続人がいない場合でも、内縁の配偶者が遺産を受け取るには「相続財産管理人」を選任して特別縁故者への財産分与を申し立てるなど、複雑な手続きを取らなければなりません。

内縁の配偶者がいる場合の相続トラブル防止方法

内縁の配偶者がいる場合は、相手に遺産を遺贈するために遺言書を作成しておくこと必要です。

また、生活を共にしていたことを証明するためにも住所を同一としていることも大事です。

その他にも、生命保険の受取人として内縁の配偶者を指定するなど特定の条件のもとに利用できる方法もありますが、現在の法律実務においては、相続の際、内縁の配偶者に対して、事前の準備なしに、十分な権利保障を行うことは難しいのが実情です。

相続トラブル5.認知した子どもがいる

認知した子どもにも現在の家族の子どもと同じ相続権がある

配偶者以外の人との間に子どもがいて認知している方、あるいは遺言で認知する予定の方も相続トラブルに注意が必要です。

認知された子どもにも、配偶者との間に生まれた子どもと同様の相続分が認められます。

しかし死亡時の家族からすると、突然あらわれた婚外子に遺産を渡すことに納得できず、遺産分割協議が紛糾してしまうのです。認知しなくても、婚外子の方から死後認知を請求してくる可能性があります。

認知した子どもがいる場合の相続トラブル防止方法

婚外子がいることを現在の家族に明かしていない場合は、相続が発生した際にトラブルにつながりやすくなります。

婚外子がいるなら必ず遺言書を作成して遺産相続方法を指定しておきましょう。遺言書を作成しても、遺言無効や遺留分侵害の裁判など起こされることもあり得ます。できるだけ専門家に相談をしながら法的に実効性ある遺言書を作成するようにしましょう。

相続トラブル6.不公平な遺言書が遺された

自宅や事業株式など分割できないものを公平に相続させるのは難しい

遺言書を作成しても、内容が不公平であれば相続トラブルの種になってしまう可能性があります。

例えば、自宅や事業の株式などは、居住者や事業後継者への配慮が求められることもあり、完全に公平に分けることが難しいものです。

とはいえ、兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限の遺産取得割合である遺留分が認められます。

例えば、旦那さんが妻と二人の息子を残して亡くなったときに、妻には1/4、長男には1/8、次男には1/8の遺産を最低でも相続できる権利が認められます。これが遺留分です。

※遺留分についてはこちらの記事でも詳しく解説しているので参考にしてください↓

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遺言書でこの遺留分を侵害してしまったら、遺留分権利者は侵害者に対して遺留分侵害額請求という金銭請求を行うことができます。

場合によってはお互いが譲らない場合、話し合いで解決できず、調停や訴訟になってしまうケースも少なくありません。

公平な遺言書を作成するポイント

相続トラブル防止の観点から、遺言書を作成するときには、相続人たちの遺留分を侵害しないように配慮すべきです。

どうしても遺留分を侵害せざるを得ない場合、遺産を多めに相続させる相続人や受遺者に生命保険金を受け取らせるなどして、遺留分侵害額請求に備えましょう。

例:自宅や事業の株式などの場合完全に公平に相続させることが難しい。その場合は、生命保険金・有価証券など現金化できるものを備えておくことも大事。

相続トラブル7.遺言が無効になってしまう

定められた形式通りでないと遺言が無効になることも・・・

遺言書を作成しても、無効になってしまうケースがあります。

たとえば自筆証書遺言(亡くなる前にご自身で書く遺言)を作成するとき、本文をパソコンで作成してしまったり、間違えて書いた部分を修正液で訂正してしまったりすると、それだけで遺言が無効となってしまいます。

他にも印鑑を押し忘れていたり、作成した日付が入っていないというようなミスもよく見受けられます。

法務局に遺言書を預ける遺言書保管制度を利用すれば、形式面のミスは生じにくくなりますが、それでも内容面のチェックまではしてもらえません。自筆証書遺言を作成する場合は、事前に専門家に確認してもらうことがお勧めです。

専門家と一緒に作る公正証書遺言が最も安心

現在の遺言制度の中では、公正証書遺言が最も安全性・確実性が高いものになります。

公正証書遺言は、公証人という法律専門家に作成してもらう遺言です。

費用が多少かかるものではありますが、専門家に作成してもらうので、形式的なミスは心配する必要がありません。

詳しくはこちらの記事も参考にしてください↓

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ただし公正証書遺言であっても、必ずしも有効性が保障されるわけではありません。遺言者の認知症が進行してから作成すると無効になる可能性があるので注意が必要です(そもそも作成を断られてしまう場合も多いですが)。

遺言書を無効にしないためには、まずは公正証書遺言を利用すべきです。公正証書遺言であれば、少なくとも要式違反で無効になる可能性はありません。

遺言を作成する際は、ご本人の判断能力が十分にあるうちに取り掛かるようにしてください。

相続トラブル8.亡くなった方(被相続人)を介護した相続人がいる

介護の労力を金銭的に評価するのは難しい

亡くなった方(被相続人)の生前に献身的に介護した相続人には「寄与分」として他の相続人より多く遺産を受け取れる権利が発生することがあります。

しかし、介護にかかった労力をいくらとして計算するかは非常に難しいポイントです。なので、他の相続人が寄与分を否定して相続トラブルにつながるパターンがあります。

相続人同士で事前に話あっておくことがトラブルを防ぐ

寄与分によるトラブルを防ぐためには、介護の大変さなどの情報を相続人同士で共有しておくことも大事です。

例えば兄弟が実家を離れ遠方に住んでいた場合、介護の状況を知らないということもあります。情報が共有されないまま相続がはじまると、寄与分の話をいきなり受け入れることは心情的に難しいでしょう。

できるだけ、介護について認識を相続人同士で統一しておくのが揉めないための第一歩となります。

また遺産を遺す側としては、特定の相続人やその配偶者などに介護してもらった場合、寄与分を考慮して多めに遺産を相続させたいと考えるでしょう。ただ要介護の状態が相当進んでからでは遺言書を作成できなくなる可能性もあるので、元気なうちに早めに遺言書を作成しておくべきです。その上で、変更したいときには変更部分だけを別の遺言書で指定すれば、変更内容を有効とすることができます。

相続トラブル9.生前贈与・学費・結婚式費用など高額なお金を受け取った

高額な生前贈与を受け取ると相続する遺産を減らされることがある

特定の相続人へ高額な財産を生前贈与すると、「特別受益」が問題となって相続トラブルにつながるケースが多々あります。

特別受益がある場合、生前贈与を受けた相続人の遺産取得割合を減らす「特別受益の持戻計算」を行うべき、と主張されるのです。

生前贈与だけでなく結婚式、学費など数十年前にもらったお金のことで、揉める場合もあります。

遺言で「特別受益の持戻免除」の意思を伝えておくとトラブルになりにくい

特別受益に関するトラブルは生前贈与などで受け取った財産を持ち戻す必要がなくなる「特別受益の持戻免除」を行っておくと防止できます。

特別受益の持戻を免除しておけば、他の相続人は特別受益の持戻を要求できません。

遺言書の中に規定の文章を入れることで免除の意思表示ができます。

※特別受益については下記の記事も参考にしてください↓

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相続トラブル10.遺産が使い込まれた

いつのまにか親の預金が使い込まれていた

特定の相続人によって遺産が使い込まれるトラブルもありがちです。

よくあるのが、被相続人と同居していた相続人が預金を使い込むパターンです。

使い込まれた時期や内容などによっては、不当利得返還請求や不法行為にもとづく損害賠償請求などの別手続きを踏まねばなりません。訴訟になって大きなトラブルにつながる事例もあります。

何のためにお金を使ったのかが争点になる

預金が使い込まれていた場合は、使ったお金が、亡くなった方(被相続人)のために使われたのか?それとも、相続人が自分のために使い込んだのか?ということが争点になります。

場合によっては、領収書や入出金を整理し、妥当な使用目的とそうでない使い込みを調査していくこともあります。

そうならないためにも、遺産の使い込みを防止するために、生前にしっかり財産管理の体制を整えるべきです。

家族信託や後見制度の利用も有効な対応策となります。

相続トラブル11.相続人同士が疎遠、仲が悪い

家族の事情を知らない疎遠な親戚が相続人になることも

もともと相続人同士が疎遠だったり仲が悪かったりすると、相続トラブルが起こりやすくなります。

たとえば、子どもが親より先に死亡して孫が相続人になる(代襲相続)の場合です。

子どもが親より先に死亡している場合、孫だけではなく本来相続人ではない、甥・姪などの親族に相続権が発生ことがあります。

この親族たちが普段から疎遠な場合、「実家は長男のもの」「介護に貢献した〇〇は不動産をもらう」など家族毎の実情や情緒的な事情を理解してもらいにくく、形式的な型どおりの相続権を主張されてしまうことが考えられます。

もしものことを考えた遺言書を作成しておく

トラブルを防止するため、誰にどの遺産を相続させるのか、遺言書で指定しておくことがトラブルを防ぐためには重要です。

遺言書で指定した相続人が先に亡くなってしまうというケースもあり得ますので、もしものことまで考えた遺言書をできるだけ作成するようにしてください。

相続トラブル12.子どもがいない夫婦

子どもがいないと相続が複雑になることも

子どもがいない夫婦の場合、一方が死亡すると配偶者と親や兄弟姉妹が共同相続人になります。

普段から交流のある兄弟姉妹が相続人になる場合は、ほとんど問題はおこりません。しかし、兄弟姉妹も死亡していると、その子どもにまで相続権が発生することがあります。

そうなると、人数も多くなり、そもそも相続人同士が会ったこともないという疎遠な関係もあり得るでしょう。このような状況で相続が発生するとトラブルが起こりやすくなります。

遺言書があれば揉めずにすむ

やはりこの場合も、トラブルを予防するには遺言書の作成がポイントになります。

自分が亡くなることで誰にいくらの相続権が発生するのかを考慮し、できるだけ公平な遺言書を用意するようにしてください。

兄弟や親戚など相続が複雑になりそうな場合は、専門家に事前に相談することでトラブルを防止しやすくなります。

当事務所にも千葉県をはじめとして、東京、埼玉、神奈川など多くの方から相続トラブルのご相談が寄せられます。

相続対策が気になっている方やトラブルを早く解決したいという方はお気軽にご相談ください。

相続手続きの全体像は下記の記事でも解説しています

はじめての方にとって相続手続きは、複雑に感じることが多いと思います。

下記の記事では相続手続きの全体像を初心者の方でもわかりやすいよう簡単にまとめておりますので、ぜひ参考にしてください。

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