公正証書遺言作成手続の流れ。費用・必要書類など弁護士が解説

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。

今回は、公証役場で公正証書遺言を作成する場合の手続の流れについて説明していきます。

1 公正証書遺言とは?

公正証書遺言は、遺言者が公証人の目の前で、遺言の内容を口頭で話し、公証人がその内容を書き留めることによって作成する遺言です。

公正証書遺言は、遺言の中でも確実性安全性が最も高いため、実務上、利用されることが多い遺言です。

公正証書遺言を含めた遺言の詳細については、相続お役立ち情報「揉めないための準備が肝。遺言制度」をご覧ください。

2 公正証書遺言の作成手続は?

以下の手続はご自身で公正証書遺言を作成する場合の手続の流れとなります。

弁護士などの専門家に遺言作成を依頼されている場合は、「(6)当日公証役場へ行く」以外の段取りはほぼ専門家が行うことができます。
この場合の詳細は担当弁護士などとご相談ください。

(1)作成したい遺言の内容を決定する。

まずは作成したい公正証書遺言の内容を決定します。

ここで決定する必要がある遺言の内容はあくまで概要ですので、遺言書として書き留める必要はありません。どの財産を誰にあげることにするのか、箇条書きでまとめるだけでも十分です。

例えば、

・自宅不動産は長男に相続させる
・預貯金は長男に1/4、次男3/4の割合で分割する
・お墓は長男に管理してもらう

 といった、まとめた方で問題ありません。

(2)必要書類を収集する。

遺言の内容が決まったら、公正証書遺言の作成に必要な書類を収集します。

必要書類の収集は、公証役場の予約後でも構わないのですが、取得に時間が掛かる書類が含まれている場合もあるため、早めに収集しておくと安心です。

主な必要書類は以下のとおりです。

・遺言者と相続人との関係が分かる戸籍謄本
相続人に財産を残す場合に必要となります。1通で関係が分からない場合は、複数の戸籍謄本が必要となる場合もあります。

・受遺者の住民票
相続人以外の者に財産を残す場合、対象となる方(受遺者)の住民票が必要となります。

・預貯金の残高が分かる資料
遺言の対象となる財産に預貯金が含まれている場合、その預貯金の通帳のコピーや残高証明書を準備します。

・不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書
遺言の対象となる財産に不動産が含まれている場合は、その不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)、固定資産評価証明書が必要になります。
登記簿謄本(全部事項証明書)は法務局で、固定資産評価証明書は不動産所在地の市役所でそれぞれ取得します。
なお、固定資産税納税通知書がお手元にあれば、固定資産評価証明書の取得は不要です。

(3)証人を手配する。

公正証書遺言の作成には、証人2名の立ち会いが必要となるため、証人2名を手配します。

証人の役割は、遺言者に人違いがないこと、遺言者の真意に基づき公正証書遺言が作成されたことなど、公正証書遺言の作成手続が適正に行われたことを確認することにあります。

なお、相続人や受遺者など遺言の利害関係者は証人となることができません。

そのため、弁護士や司法書士などの資格をもった専門家が公正証書遺言の作成に関与する場合は、その専門家が証人となるケースも多くあります。

証人を手配することが難しい場合は、公証役場に証人の手配をお願いすることもできます。

公証役場が手配する証人は、地域の実情によって異なりますが、地元の弁護士・司法書士などの専門家やその事務所職員などが手配されるケースが比較的多くみられます。

(4)公証役場に連絡を入れる。

ここまで準備ができたら、公証役場に連絡を入れ、遺言作成のスケジュールを調整します。

公証役場の所在地は日本公証人連合会HPでご確認ください。

連絡の際は、(1)~(3)までで準備した資料などをお手元に準備の上、公証役場に電話を掛け、「公正証書遺言を作成したい」旨お伝えいただくと、必要事項を案内してもらえると思います。

通常は、ここで公正証書遺言作成日の予約を行いますが、遺言内容によっては、事前に公証人との打ち合わせが必要となる場合もあります。

(5)費用見積りを確認する。

(4)での公証役場からの案内に従い、必要な資料を公証役場に提出すると、まもなく費用見積りが提示されます。
費用見積りが提示されたら、内容を確認の上、提示金額を準備します。

公正証書遺言の作成手数料は、作成日当日、公証役場に持参し、公正証書遺言作成手続終了後、現金で支払います。
なお、基本となる手数料は、以下の基準により算出されます。

目的の価額手数料
100万円以下5000円
100万円を超え200万円以下7000円
200万円を超え500万円以下11000円
500万円を超え1000万円以下17000円
1000万円を超え3000万円以下23000円
3000万円を超え5000万円以下29000円
5000万円を超え1億円以下43000円
1億円を超え3億円以下43000円に超過額5000万円までごとに13000円を加算した額
3億円を超え10億円以下95000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

例えば、1億円の預貯金を相続人2名に対し、5000万円ずつ相続させる場合、

 目的物の価格5000万円→1人当たり手数料29,000円

 基本手数料 29,000円×相続人2人=58,000円

となります。
なお、全体財産が1億円以下の場合は、手数料に1万1000円が加算されます(遺言加算といいます)。
手数料の詳細については、日本公証人連合会HPをご参照ください。

(6)当日公証役場へ行く。

作成当日に公証役場に行きます。
当日の持参物は以下のとおりです。

・実印

・印鑑証明書(印鑑登録がない場合には運転免許証等の公的機関が発行した顔写真入り身分証明書)

・手数料

・その他公証役場から持参指示があった書類

(7)正本・謄本を受け取り保管する。

作成された公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、遺言者には、公正証書遺言の正本と謄本各1通が即日交付されます。

通常は、どちらか1通は遺言者の手元で保管します。遺言中で遺言執行者を指定している場合は、遺言執行者(候補者)に残りの1通を渡しておくと、遺言執行手続をスムーズに行うことができます。

なお、正本・謄本いずれも公証役場に申請することにより再発行してもらうことができます。

3 公証役場について

(1)公証役場の構成

公証役場の職務は、通常、公証人とその補助者たる書記によって行われています。

市川公証人合同役場のように、名称に「合同」が着く公証役場には複数の公証人が在籍しています。
ただし、複数の公証人が在籍していても、必ず「合同」が着くわけではなく、例えば、千葉公証役場は、複数の公証人が在籍していますが、名称に「合同」の文字はありません。

(2)公証役場の選択

公証人には職務執行区域が定められており、所属法務局の管轄区域外で職務を行うことはできません。
そのため、例えば茨城県内の公証役場の公証人が千葉県内に出張して公正証書遺言の作成業務を行うことはできません。

ただし、公証役場には、裁判所の場合のような管轄制度はなく、遺言者が公証役場に赴いて公正証書遺言の作成を行う分には、全国の公証役場から任意の公証役場を選択して利用することができます。

特にこだわりがなければ、自宅や職場から交通の便が良い公証役場を適宜選択していただいて構いません。

(3)公証役場への行き方

法律事務所羅針盤が所在する京葉地区(市川市、船橋市、浦安市)には、市川公証人合同役場と船橋公証役場の2つの公証役場があります。

市川公証人合同役場

名称 市川公証人合同役場

住所 千葉県市川市八幡3-8-18 メゾン本八幡ビル205

電話番号 047-321-0665

JR本八幡駅から市川公証人合同役場への行き方(徒歩約6分)

船橋公証役場

名称 船橋公証役場

住所 千葉県船橋市湊町2-5-1 アイカワビル5階

電話番号 047-437-0058

JR船橋駅から船橋公証役場への行き方(徒歩約10分)

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