遺産分割審判とは?調停からの移行や手続の流れを解説

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。
今回は、遺産分割審判が行われる場合・特徴・手続の流れなどを解説します。

遺産分割協議・遺産分割調停が不調に終わった場合、最終的には「遺産分割審判」によって、遺産分割の方法を決定します。

家庭裁判所で行われる審判手続は、一般の方にとってはなじみがないかと思いますので、適宜弁護士のアドバイスを受けながら手続きを進めることをお勧めいたします。

1. 遺産分割審判が行われるのはどのような場合?

遺産分割審判は、遺産分割の方法を決めるための、いわば「最後の砦」として位置づけられます。
遺産分割審判が行われるのは、以下の場合です。

1-1. 遺産分割調停が不成立に終わった場合

遺産分割調停が不成立になった場合、自動的に遺産分割審判へと移行します(家事事件手続法272条1項、4項)。

遺産分割協議・調停を経てもなお、相続人間で遺産分割に関する合意が成立しない場合には、何らかの方法で強制的に遺産分割を行うほかありません。

そのための手続として位置づけられているのが「遺産分割審判」です。

このような趣旨から、遺産分割調停成立の見込みがないと判断された場合には、その時点で家庭裁判所が調停を終了させ、そのまま審判手続へと移行することになっているのです。

なお遺産分割に関しては、訴訟手続を利用することはできないため、遺産分割審判が最終判断を行う手続となります。

1-2. 調停を経ずに審判を申し立てることも可能|ただし調停に回されることが多い

法律上は、遺産分割調停を経ずに、いきなり遺産分割審判を申し立てることも認められます。

ただし遺産分割には、「まず当事者である相続人同士で話し合いを尽くすべき」という基本的な考え方があります。

そのため、家庭裁判所としても、先に遺産分割調停で話し合いを尽くさせ、ダメならやむを得ず遺産分割審判で判断するという流れを取りたいと考えるものです。

家庭裁判所には、遺産分割審判事件を、職権で遺産分割調停に付すことが認められています(家事事件手続法274条1項)。

仮に調停を飛ばして遺産分割審判を申し立てたとしても、家庭裁判所の職権により、事件が遺産分割調停へと回される可能性が高いでしょう。

2. 協議・調停と比較した遺産分割審判の特徴

遺産分割審判の手続は、遺産分割協議・調停とは、以下の点で全く性質が異なります。

2-1. 家庭裁判所が強制的に解決を示す

遺産分割協議・調停は、あくまでも当事者である相続人・包括受遺者の合意により、遺産分割の方法を決める手続です。

これに対して遺産分割審判は、当事者が納得していないとしても、家庭裁判所が強制的に遺産分割を命ずる手続になります(遺産分割の合意が成立しなかった場合に備えた手続なので、当然といえます。)

そのため、遺産分割審判に発展する場合には、手続きの中でやるべきことを尽くしたうえで、どんな結果も受け入れるという心構えが必要になるでしょう。

2-2. 原則として、法律上の権利に従った遺産分割が行われる

遺産分割協議・調停の場合、当事者である相続人・包括受遺者が合意さえすれば、どのような方法で遺産分割を行っても構いません。

これに対して遺産分割審判の場合、裁判所が客観的な立場から遺産分割の方法を決定するため、遺産の配分は基本的に法律上の権利(法定相続分や包括遺贈の割合など)に基づいて決定されます。

たとえば不動産のように、分割が難しい遺産が存在する場合には、審判を行う前段階で競売による換価が命じられることもあります(家事事件手続法194条1項)。

このように家庭裁判所は、あらゆる手段を尽くして公平な遺産分割を実現しようとするため、当事者としてもそのつもりで審判手続に臨む必要があるでしょう。

3. 遺産分割審判の手続の流れは?

遺産分割審判は、話し合いをベースとした遺産分割調停とは異なり、かなり厳密な手続に従って進行します。
遺産分割審判手続の大まかな流れは、以下のとおりです。

3-1. 調停不成立によるみなし申立て

前述のとおり、遺産分割審判は、基本的に遺産分割調停が不成立となったことによって開始します。

厳密には、遺産分割調停が不成立となった場合、調停申立ての時に審判申立てがあったものとみなされます(家事事件手続法272条4項)。

この場合、特に追加での申立て等を行う必要はなく、そのまま遺産分割審判の手続が始まることになります。

3-2. 事実の調査・証拠調べ

調停不成立により、審判申立てがあったとみなされた場合、家庭裁判所により審判期日が指定されます。

当事者は、審判期日に向けて主張書面などを作成し、証拠資料とともに家庭裁判所へ提出します。

審判期日では、家庭裁判所が、調停で提出された資料を確認して事実の調査を行ったり、当事者から改めて提出された証拠資料について証拠調べを行ったりして、事件に関する心証形成を行います(家事事件手続法56条1項)。

3-3. 当事者の陳述聴取(審問期日)

遺産分割審判に当たっては、家庭裁判所は原則として、当事者の陳述を聴かなければなりません(家事事件手続法68条1項)。

家庭裁判所による当事者の陳述の聴取は、当事者の申立てがある場合には審問期日において行われ(同条2項)、他の当事者は原則として審問期日に立ち会うことができます(同法69条)。

審問期日において当事者が述べた事柄は、家庭裁判所が審判の内容を決定するための資料として考慮されます。

3-4. 家庭裁判所による審判

審判手続における審理が熟したと判断した段階で、家庭裁判所は審判を行います(家事事件手続法73条1項)。

審判では、当事者に対して金銭の支払い・物の引渡し・登記義務の履行が命じられるなど(同法196条)、遺産分割の具体的な方法が指定されます。

相続人および包括受遺者は、遺産分割の審判に対して、審判の告知を受けた日から2週間以内に限り、即時抗告をすることができます(同法198条1項1号、86条1項、2項)。

3-5. 審判の確定・審判に従った遺産分割

当事者から適法な即時抗告が行われなかった場合、審判は確定します。
その後、当事者は審判の内容に従い、遺産分割を行う義務を負います。

4. 遺産分割調停・審判は弁護士に相談を

遺産分割審判は、家庭裁判所が当事者の主張や証拠から事実を認定し、客観的な立場から遺産分割の方法を決定する点で、訴訟に準じて厳密性の高い手続といえます。

十分な主張の展開や証拠の提出ができなかった場合、審判によって不利な結論を示されてしまう可能性があるので、弁護士にご相談のうえで慎重に準備を整えることをお勧めいたします。

また遺産分割審判は、先行する遺産分割調停との連続性が高いことが特徴で、実質的に調停での心証が審判にも引き継がれる場合が多いです。

そのため、調停の段階から合理的な主張を行い、家庭裁判所のよい心証を得ておくことも、審判で有利な結果を得るために重要なポイントとなります。

遺産分割調停・審判を通じて、家庭裁判所を説得できるような主張を行うに当たっては、ぜひ弁護士にご相談ください。

財産や親族関係のご状況等、さらには依頼者様のご意向を十分に踏まえたうえで、最終的な審判手続までを見据えた対応方針についてアドバイスを差し上げます。

相続財産への思い入れが強い方や、他の相続人との間で遺産分割の揉め事が発生してしまった方は、お早めに弁護士までご相談いただけますと幸いです。

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