管理費を滞納した区分所有者を追い出せる?競売請求が認められる場合

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。
今回は、区分所有者に管理費滞納などの迷惑行為がある場合に、マンションからその区分所有者を追い出せる場合があるのか、区分所有法59条に基づく競売請求が認められる場合について説明していきます。

1 区分所有法59条に基づく競売請求

区分所有者が管理費滞納などの迷惑行為を行った場合、一定の条件を満たす場合、管理組合はその区分所有者の専有部分の競売請求を行うことができます。

競売請求は、裁判所の手続を通じて、対象となる区分所有権を強制的に売却する手続であり、その結果、区分所有者はその専有部分から追い出されることとなります。

この請求が認められた場合、滞納管理費等の支払義務は新所有者に承継され、管理組合は新所有者から滞納管理費等を回収することができます(旧所有者の支払義務も併存します)。

2 競売請求が認められるための条件は?

競売請求が認められるためには、
①共同利益背反行為があること
②区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
③他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること(補充性の要件)
の3条件が必要となります(区分所有法59条1項)。

競売請求は区分所有権をはく奪する効果を持つことから、その行使には厳格な要件が定められているものです。

区分所有者が管理費を滞納した場合、滞納が多額かつ長期にわたる場合は①②の条件に該当するとするのが裁判例の大勢であり、これに加えて、他に回収方法がないと認められる事情があれば競売請求が認められる傾向にあります。
詳細は4の裁判例で説明します。

3 競売請求を行うためにはどのような手続が必要?

競売請求の手続

競売請求は総会決議に基づき、訴訟を提起して行うことが必要です(区分所有法59条1項)。
実際の訴訟の提起は、管理者または集会において指定された区分所有者が原告となって行います(区分所有法59条2項、57条3項)。通常は管理組合理事長が原告となることが多いでしょう。

競売請求の総会決議は、区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数による特別決議が必要となります(区分所有法59条2項、58条2項)。

また、総会決議に先立ち、当該区分所有者に対して、弁明の機会を与えなければなりません(区分所有法59条2項、58条3項)

6か月の期間制限に注意

競売請求の訴訟において請求が認められた場合、その判決が確定した日から6か月以内に競売申立てを行う必要があります(区分所有法59条3項)。

区分所有権が譲渡された場合

競売請求の判決後(厳密には口頭弁論終結後)に当該区分所有権が譲渡された場合、譲受人に対してその判決に基づいて競売申立てを行うことはできません(最高裁平成23年10月11日決定)。

「建物の区分所有等に関する法律59条1項の競売の請求は、特定の区分所有者が、区分所有者の共同の利益に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものであるから、同項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に、その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできないと解すべきである。」

最高裁平成23年10月11日決定

4 競売請求に関する裁判例

(1)管理費滞納を理由とする競売請求

○競売請求が認められた事例

①区分所有者が約4年にわたり管理費、修繕積立金等を滞納していた事例(東京地裁平成17年5月13日判決)

判断の要点
・当該区分所有者は管理組合との話し合いに応じようとせず、管理組合代理人弁護士の事務所に対し、脅迫的な電話を掛ける等の態度をとったなどの事情から補充性を認定。

②区分所有者が約5年半に渡って約940万円(約250万円の遅延損害金を含む)の管理費、修繕積立金を滞納していた事例(東京地裁平成19年11月14日判決)

判断の要点
・本件マンションの総戸数は12戸であり、1戸による管理費等の滞納が本件マンションの維持管理に与える影響は看過できない。
・管理組合の資産残高が減少しており、本件マンションは必要な改修工事が実施できない状況にあり、被告の管理費等の滞納により区分所有者に実害が生じている。
・被告の管理費等の未払問題は3回目であり、本件未払管理費等の問題は話合いによって解決できる問題であるとする被告の主張は採用できないと認定。

③区分所有者が約12年にわたって約2億7000万円の管理費、修繕積立金を滞納していた事例(東京地裁平成22年11月17日判決)

判断の要点
・区分所有者は破産手続開始決定を受けている。
・対象物件は収益物件であり、区分所有者は、本件専有部分を賃貸して賃料収入を得ていたが、抵当権者(整理回収機構)に対する借入金の返済を滞納し、抵当権者から物上代位による賃料差押えを受けた。
・抵当権者が高額の登記抹消料を請求しているため、破産管財人による任意売却等が成立する見込みはないなどの事情から補充性を認定。

④区分所有者が約12年にわたって断続的に約330万円の管理費、修繕積立金を滞納していた事例(東京地裁平成24年9月18日判決)

判断の要点
・当該区分所有者は法人であるが、代表者が不在であり、本件競売請求訴訟については特別代理人が選任されている。
・本件マンションは全体で385室あり、本件マンション全体の年間管理費等に占める当該区分所有者の専有部分の分の年間管理費等の割合は0.34%にすぎず、その滞納金額が直接本件マンション全体の管理費等の支出に影響が出ているわけではない。
・しかし、当該区分所有者の滞納額は毎月増大しており、将来にわたってさらに増大する蓋然性が高いことなどから補充性を認定。

⑤区分所有者が約6年半にわたって約170万円の管理費、修繕積立金等を滞納していた事例(東京地裁平成25年10月15日)

「認定した事実経過によれば、被告からの任意の弁済を期待することはできず、今後も被告の滞納管理費等の金額が増大することが見込まれること、本件管理組合は、被告の滞納管理費等の回収のために、その債務名義を取得し、本件建物の強制競売開始決定を申し立てるなど、採り得る手段を講じているが、無剰余を理由として強制競売の手続が取り消され、その目的を達していないことが認められ、これらの事情に照らすと、被告の行為によって、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な状態が生じているというべきである。」

東京地裁平成25年10月15日
⑥区分所有者が約7年半にわたって約140万円の管理費を滞納していた事例(東京地裁平成26年10月27日判決)

判断の要点
・当該区分所有者は不在者であり、不在者財産管理人が選任されている。
・本件専有部分は長期にわたり空室状態が続いている上、窓ガラスが一部破損していることが認められ、第三者による不法侵入等により、他の区分所有者らの生命、身体や財産が不当に侵害されるおそれも高いことなどから補充性を認定。

⑦区分所有者が約10年にわたって約200万円の管理費、修繕積立金を滞納していた事例(東京地裁平成27年2月20日判決)

判断の要点
・当該区分所有者は法人であり、代表者死亡のため特別代理人が選任された。
・同社は休眠状態であり、滞納額は今後増えることはあっても減少することはないことなどから補充性を認定。

⑧区分所有者が約5年半にわたって約100万円の管理費、修繕積立金を滞納していた事例(札幌地裁平成31年1月22日判決)

判断の要点
・当該区分所有者は約90歳であり、平成16年以降(開始時期は平成25年)特別養護老人ホームに入所しており、本件競売請求時点では会話もできず、正確に事理を判断する能力を欠いた状態と認定(本件手続には特別代理人が選任されている)。
・本件専有部分の査定額は365万円であり、被担保債権額190万円の抵当権が設定されていることを考慮すると、先取特権に基づく不動産競売手続は無剰余取消しによって終了する可能性が高いことなどから補充性を認定。

○競売請求が認められなかった事例

①区分所有者が約5年半に渡って約170万円の管理費、修繕積立金等を滞納したケースで、競売請求が認められなかった事例(東京地裁平成18年6月27日判決)

判断の要点
・区分所有者の滞納は、長期かつ多額の管理費等の滞納にあたり、区分所有法6条1項所定の共同利益背反行為に該当する。
・しかし、区分所有者が経済状況の好転を理由に和解を希望する態度を示していること、区分所有者に対する債権執行(なお、預金債権に対する執行は空振りに終わっている)の余地がないことは明らかではないこと、などの状況からすれば、競売請求以外に管理費等を回収する途がないことが明らかとは言えないと認定し、補充性を否定。

「しかしながら、被告に対する債権回収の方策として、預金債権以外の債権執行の余地がないかについては明らかとはいえず、未だ本来の債権回収の方途が尽きたとまでは認められない。さらに、被告は、本件訴訟の第2回口頭弁論期日に出頭し、陳述した準備書面において、長期間にわたる管理費の滞納を謝罪するとともに、経済状況が好転したことから本件管理費等の分割弁済による和解を希望する旨の態度を示しているのであって、このような被告の態度からすれば、原告が和解案として、まず被告に対して分割弁済の実績を示すことを要求するなどして、和解の中で本件管理費等を回収する途を模索することも考えられるところ、原告は被告の和解の希望を拒否して、同法59条1項による競売の途を選んだといえる。このような状況からすれば、本件において、原告には、同法59条1項による競売申立て以外に本件管費等を回収する途がないことが明らかとはいえないというべきであり、同条項所定の上記要件を充足すると認めることはできない。」

東京地裁平成18年6月27日判決

(2)暴力団事務所としての使用を利用とする競売請求

○競売請求が認められた事例

①区分所有者である暴力団組長がマンション専有部分を暴力団組事務所として利用していた事例(札幌地裁昭和61年2月18日判決)

「以上の事実によれば、被告は、自己及びその配下の組員らの行動を介して本件マンションの保存、管理、使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為をなし、これによる他の区分所有者らの共同生活上の障害は著しい程度に至っていると認めることができ、かつ使用禁止等の他の方法によっては、その障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者らの平穏な共同生活の回復、維持を図ることが困難と認めれるから、建物の区分所有等に関する法律第59条に規定する事由が存するものとみるのが相当である。」

札幌地裁昭和61年2月18日判決
②暴力団組長がマンション専有部分の実質的管理、処分権を有し、事実上暴力団組事務所として使用していた事例(名古屋地裁昭和62年7月27日判決)

「以上の事実によれば、被告は、本件区分所有権等の所有名義を有するとはいえ、実質的管理、処分権は完全に訴外Aに掌握され、同訴外人に一切の処分を委ね、本件不動産を同訴外人とその配下の組員らの事務所として使用させたため、多数の警察官警戒の最中においてさえ、繰り返し本件マンション及びその付近が対立する暴力的組織の大胆で非常に危険な抗争の場とされたことにより、他の区分所有者らの平穏を著しく害し、本件マンションの評価を著しく下落させたものであり、訴外Aが本件区分所有権等の実質的な管理、処分権を保有する限り、今後も同様な事件の発生する危険があることは否定できないから、被告は本件マンションの保存に有害な行為及びその管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をなしたもので、これによる区分所有者の共同生活上の障害は著しく、かつ、使用禁止の請求等の方法によってはその障害を除去して区分所有者の平穏な共同生活の維持を図ることが困難であると認められるから、建物の区分所有等に関する法律59条1項にっ規定する要件を具備すると認められる。」

名古屋地裁昭和62年7月27日判決
③暴力団組長が賃借していた専有部分について競売請求を認めた事例(京都地裁平成4年10月22日判決)

○競売請求が認められなかった事例

①区分所有者がマンション専有部分を暴力団事務所として使用させたことは認められるが、既に暴力団事務所としての使用は終了し、空室となっている状況等を考慮し、競売請求が認められなかった事例(東京地裁平成25年1月23日判決)

判断の要点
・本件競売請求訴訟は平成22年12月24日に提起されたが、暴力団事務所としての利用は平成22年11月末頃までに終了しており、平成23年1月末以降、空室となっていた。
・当該区分所有者は、不動産業者に依頼して買付証明書を取り付けるなど、専有部分を売却するための具体的行動を行っていたことなどから、区分所有者の共同生活上の障害が著しいことの要件を否定。

「区分所有法59条に基づく競売請求が認められるためには、同条に定める要件、すなわち、共同利益背反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいことが、口頭弁論終結時において認められる必要があるところ、前記1(2)イ(コ)のとおり、本件専有部分は、平成23年1月末ころにE組が組事務所としての使用を止めており、その後は、本件口頭弁論終結時に至るまでの間、空室であって、暴力団構成員の出入り等により暴力団の活動が行われていた形跡はなく、その他、前記1の各認定事実によっても、本件口頭弁論終結時において、被告の共同利益背反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいとまで認めるに足る事情はないといわざるを得ない。」

東京地裁平成25年1月23日判決

(3)その他の迷惑行為

①区分所有者である親Aから使用貸借している子Bに異常な言動(奇声、騒音、振動。叫び声等の発生、各種設備の点検拒否など)があったケースにおいて、AB間の使用貸借契約の解除及び本件専有部分の引き渡しに加えて、競売請求が認められた事例(東京地裁平成17年9月13日判決)

判断の要点
・本件マンション21戸のうち18戸の居住者がBの騒音等の被害を受けていたと認定。
・被害は約4年間に及び、本件専有部分に隣接する区分所有者は、夜眠れず健康や仕事に支障を来したり、本件専有部分に近接する特定の部屋を通常どおり使えない、場合によっては居住者が他所へ避難せざるを得ないなどの被害を受けていたと認定。
・Aについても、管理組合からBの言動に関する報告を受け、対応を検討して欲しいとの要請を受けたが、居住者間で解決して欲しいと返答し、問題解決に関与することを拒絶した。
・本件競売請求を認めなかった場合は、AがBを再度本件専有部分に居住させる事態を迎えることは容易に予想されるところであり、そうなると結局本件訴訟全体が水泡に帰すこととなると認定。

②管理組合が総会決議において高圧一括受電方式の導入を決定したところ、区分所有者が総会決議に反対して電気供給契約の切換えに応じないため、管理組合が高圧一括受電方式の導入工事を進めることができなくなったケースにおいて、競売請求が認められた事例(横浜地裁平成22年11月29日判決)

判断の要点
・区分所有者は、本件総会決議に関する事前説明会及び総会のいずれにも出席せず、本件王子に対する反対の意思表明をすることもしていなかった。
・本件訴訟提起後に行われた当該区分所有者を対象とする説明会においても、当該区分所有者は質疑応答をするに留まった。
・裁判所は、当該区分所有者の態度には、「建設的な議論を通じて問題解決に取り組むという姿勢は見られず、専ら自己の見解に固執し、本件団地のほかの住民と協力して住環境の保全と向上を図ることには目を向けないという姿勢が顕著である」と認定。
・当該区分所有者は、以前にも別件工事を拒否して管理組合と訴訟に至ったことがあり、その訴訟での和解の際、「マンションが運命共同体であることにかんがみ、今後、本件団地の区分所有者の共同の利益の増進及び良好な住環境の確保のために、管理規約、総会決議その他の関係法規を遵守し、相互に協力することを約する。」旨の約束をしていた。

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