法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。
今回は、マンション管理組合の議事録について、作成上の留意点、手続、保管方法などを説明していきます。
1 マンション管理組合の議事録
マンション管理組合は毎年1回以上、総会を開催する必要があります(区分所有法34条2項、標準管理規約42条3項)。
そして、総会を開催した場合は総会議事録を作成する必要があります(区分所有法42条1項、標準管理規約49条1項)。
また、理事会を開催した場合も理事会議事録を作成しなければなりません(標準管理規約53条4項)。
2 総会議事録の作成手続
(1)理事長に作成義務がある
総会議事録は、議長が作成しなければなりません(区分所有法42条1項、標準管理規約49条1項)。
そして、総会の議事長は原則として理事長が務めることとされています(区分所有法41条、標準管理規約42条5項)。
そのため、総会議事録の作成義務は理事長が負います。
もっとも、実務上は管理会社担当者が原案を作成し、この原案に対して理事長を含む管理組合役員が確認修正を行うことを通じて作成することが多いと思われます。
(2)議事録の作成方法
総会議事録は、書面または電磁的記録で作成します(区分所有法42条1項、標準管理規約49条1項)。
電磁的記録の具体例としては、「磁気ディスク、磁気テープ等のような磁気的方式によるもの、ICカード、ICメモリー等のような電子的方式によるもの、CD-Rのような光学的方式によるものなどによって調製するファイルに情報を記録したもの」が挙げられています(標準管理規約49条関係コメント②)。
(3)議事録の記載内容
議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載しなければなりません(区分所有法42条2項、標準管理規約49条2項)。
総会議事録の書式例は以下のとおりです。
決議結果については、通常は「賛成多数で承認された」「賛成〇名、反対〇名で承認された」等の記載で足りますが、建物の復旧決議、建替え決議の場合は、各区分所有者の賛否を記載する必要があります(区分所有法61条6項、62条8項)。
また、議事録には、議長及び総会に出席した区分所有者2名が署名押印する必要があるため、議事の最初に議事録署名人を決めておきましょう。
なお、議事録の署名押印は総会決議の有効要件ではなく、議事録上、議長及び出席区分所有者2名の署名押印を欠いていても総会決議は有効と考えられています(東京地裁平成20年4月11日判決、東京地裁平成26年7月10日判決)。
(4)議事録の保管方法
総会議事録は議長が保管し、保管場所をマンション内の見やすい場所に掲示しなければなりません(区分所有法42条5項・33条1項3項、標準管理規約49条5項6項)。
(5)議事録閲覧請求への対応
区分所有者または利害関係人から総会議事録の閲覧請求があった場合、理事長は総会議事録を閲覧させなければなりません(区分所有法42条5項・33条2項、標準管理規約49条5項)。
ただし、理事長は閲覧について、相当の日時、場所等を指定することができます。
閲覧請求への対応の詳細については、以下の当事務所HP「会計帳簿は閲覧させなければならない?マンション管理組合における書類閲覧請求への対応」をご参照ください。
(6)議事録に関する義務違反に対する制裁
理事長が議事録の作成義務、保管義務等に違反した場合、20万円以下の過料に処せられることとされています(区分所有法71条1号3号)。
議事録の内容に虚偽記載等があった場合も同様です(区分所有法71条3号)。
3 理事会議事録の作成手続
(1)基本的には総会議事録と同様
理事会議事録の作成手続については、基本的には総会議事録に関する標準管理規約の規定が準用されています(標準管理規約53条4項)。
そのため、理事長に作成義務があること(51条3項参照)、書面または電磁的記録で作成すること、理事長が保管し、閲覧請求の対象となることなどは総会議事録と同様です。
(2)総会議事録との相違点
理事会議事録については、議事録の保管場所を掲示する必要がありません(標準管理規約53条4項は49条6項を準用していません)。 また、理事会議事録に関しては区分所有法上に規定がなく(そもそも理事会に関する規定がありません)、総会議事録の場合のような義務違反に対する制裁規定はありません。
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