弁護士が解説。遺産分割協議後に新たな財産が見つかったらどうする?

遺産分割協議後に預金がみつかる

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。

相続手続きは大変なもの。

「遺品整理をしていたら押し入れに現金があった!」「相続後に新しく通帳が見つかった!」など、遺産分割協議後に新たな財産が見つかってしまい「厄介なことになった…」と頭を抱えている方もいるのではないでしょうか。

しかし、新たな財産が見つかっても、基本的に遺産分割協議をやり直す必要はありません。

そのため、それほど手間をかけずに対処できるケースも多いでしょう。

ただし、見つかった財産が遺産分割の内容に影響を及ぼすほどの大きなものであったり、相続人のうちの誰かが隠していたりした場合は遺産分割協議のやり直しが必要です。

また、遺産分割協議をおこなう必要があってもなくても、税金についての問題は発生します。

そこで、今回は遺産分割協議後に新たな財産が見つかった場合の対処法や見つかった財産が負債だった場合の対処法、新たな財産について発生する税金についてわかりやすく解説します。

遺産分割協議後に新たな財産が見つかってしまい「どうしたらよいのかわからない」とお悩みの方はぜひ参考にしてください。

目次

遺産分割協議後に新たな財産が見つかった場合の対処法

相続に漏れた財産が見つかったら、どのように対処すればよいのでしょうか?

遺産分割協議をやり直す必要があるのかどうかについて解説します。

原則として遺産分割協議をやり直す必要はない

後から新たな財産が見つかっても、原則として遺産分割協議を初めからやり直す必要はありません。

見つかった財産についてのみ、どのように分割するかを相続院同士で話し合うだけで足ります。

ただし、相続人全員が遺産分割協議のやり直しを望む場合は、最初からやり直してもかまいません。

遺産分割協議をやり直す必要がある場合とは

以下の場合は例外的に遺産分割協議を最初からやり直す必要があります。

遺産分割の内容に影響を及ぼすものだった場合

新たに見つかった財産がの価値が大きく、「遺産分割協議の初めからあることがわかっていれば、違う方法で分割した」というような場合、平等な分割を実現するためにも、遺産分割協議を最初からやり直すのが望ましいでしょう。

相続人が錯誤による無効を主張すれば、遺産分割協議をやり直せます。

たとえば、当初は遺産が少なく「この程度なら全て譲ろう」と判断したものの、新たに大きな財産が見つかったために大きな不公平が生じてしまうような場合、相続人は錯誤による遺産分割協議の無効を主張できます。

新たな財産が相続人が隠していたものだった場合

特定の相続人が遺産を隠しもっていたために相続から漏れた財産があった場合、他の相続人が錯誤による無効、または詐欺による取り消しを主張すれば遺産分割協議をやり直せます。

遺産分割協議後に見つかった新たな財産が負債だった場合の対処法

新たに見つかる財産は現金や不動産などプラスの財産とも限りません。

負債などマイナスの財産である可能性もあります。

ここでは、新たに負債が見つかった場合の対処法についてご紹介します。

法定相続分どおりに相続人で分割相続する

負債については法定相続人が法定相続分どおりに負担するのが原則です。

そのため、債権者からは相続人全員に対して法定相続分どおりの額の支払いを求められます。

ただし、実際の支払い内容は相続人同士で自由に決めてかまいません。

債権者からの請求が全員の元に届いたとしても、特定の相続人が全額負担するといった対処も可能です。

相続放棄、または限定承認ができることも

見つかった負債の額があまりに大きく、相続したくない場合、相続放棄や限定承認ができる可能性があります。

相続放棄とは、全ての遺産についての相続権を放棄すること、限定承認とは、プラスの遺産の範囲内で負債を支払うことです。

ただし、相続放棄や限定承認をするには以下の条件があり、これらを満たさなければできません。


・相続の開始を知ってから3ヵ月以内である
・遺産を処分したり消費したりしていない

遺産分割協議後であれば、これらの条件を満たせない可能性が高く、選択できないことも多いでしょう。

ただし、遺産の処分や消費をしてしまった場合でも、錯誤による無効が認められた判例もあります。

後になって大きな負債が見つかった場合は、諦めずに弁護士に相談してみることをおすすめします。

遺産分割から長期間経過している場合は時効の援用が可能な場合も

負債の消滅時効は、最終返済日の翌日から5年です。

相続した負債についても適用され、被相続人が最後に返済してから5年以上経過している場合は時効を援用できます。

ただし、これは2020年4月1日の民法改正による期限です。

改正以前に発生した負債については旧民法が適用されるため、最後に返済してから10年以上経過していなければ時効は援用できません。

また、時効を援用するには債権者に対して、内容証明郵便で時効援用通知を送る必要があります。

ご自身で作成、送付してもかまいませんが、債権者から反論されたり裁判を起こされたりするリスクもあるため、弁護士に相談するのが安心でしょう。

遺産分割協議後に新たな財産が見つかった場合も相続税の申告が必要

新たに財産が見つかったら、その分について発生する税金の処理も必要です。

まだ相続税の申告をしていなければ、新たな財産分もまとめて行えば問題ありません。

しかし、既に申告をしていたり遺産分割協議をやり直したりした場合は、それぞれ対処が必要です。

ここでは遺産分割協議後に新たな財産が見つかった場合の、税金についての対処法をご紹介します。

既に相続税の申告をした場合は修正申告

新たな財産の発見によって、相続額が増えた人は修正申告が必要です。

既に相続税の申告期限を過ぎている場合は、増加分に対しての相続税に加えて過少申告加算税が発生する可能性があります。

過少申告加算税の額は、新たに発生した相続税の10%程度です。

ただし、税務署の調査を受ける前に修正申告を行った場合は発生しません。

新たな財産が見つかったら早めに修正申告をおこないましょう。

また、既に相続税の申告を行っていた場合でも、申告期限内であれば、訂正した申告書を作成、提出、増額分を納税すれば問題ありません。

最初から修正内容で申告したものとして扱われます。

遺産分割協議をやり直した場合は贈与・譲渡とみなされる

遺産分割協議をやり直し、各相続人が既に取得した財産に動きがあった場合は贈与、または譲渡とみなされ、贈与税や譲渡所得税が発生します。

遺産分割協議をやり直すと手間がかかるだけでなく、これらの余分な税金も発生するため、できるだけ避けるのが賢明といえるでしょう。

あらかじめ新たな財産が発見された場合に備えておくことが大切です。

ただし、相続人による財産の隠ぺいなどで遺産分割協議が無効になったり取り消しになったりした場合は、贈与税や譲渡所得税は発生しません。

遺産分割協議は最初からなかったものとされ、各相続人の手に渡った遺産に動きがあっても、贈与や譲渡と位置付けられないからです。

遺産分割協議後の新たな財産発見で困らないために

遺産分割協議後に新たな財産が発見されると、多かれ少なかれ手間が生じたり、税金が発生したりして大変です。

できるだけそのような手間を避けるためにも、遺産分割協議前後に適切な対策を施しておくのが望ましいでしょう。

具体的には以下のような対策をしておくことをおすすめします。

財産調査をしっかり行う

財産調査は漏れのないようにしっかりおこないましょう。

最初から全ての財産を分割の対象とすることができれば、後になって問題が生じることもありません。

自分たちだけで調査することに不安がある場合は、弁護士に相談しましょう。

遺産分割協議書に新たな財産発見の際のことを盛り込む

財産調査をしっかり行ったつもりでも、漏れた財産が見つかる場合もあるものです。

そのような場合の分割方法や管理方法を遺産分割協議に記載しておけば、いざというときにスムーズに対処できます。

「新たな財産が見つかった場合は、相続人●●が取得する」「新たな財産が見つかった場合、その評価額が〇〇円以下の場合は相続人●●が取得、○○円を超える場合は再度遺産分割協議を行う」などと記載しておくとよいでしょう。

また、法定相続分どおりに分割することにおくのもおすすめです。

相続人同士でのもめごとを避けられる可能性が高まります。

まとめ

遺産分割協議後に新たな財産が見つかっても、原則として遺産分割協議をやり直す必要はありません。

ただし、あまりに大きな財産が見つかったり、相続人のうちの誰かが隠していたりした場合は遺産分割協議をやり直すことになり、手間がかかるでしょう。

弁護士に相談した方が、スムーズに進められる可能性もあります。

また、新たに見つかった財産が大きな負債であり、相続したくない場合は相続放棄や限定承認、時効の援用などによって相続を避けられる可能性があります。

いずれも専門知識がなければ難しいケースもあるため、早めに弁護士に相談するのが賢明でしょう。

千葉県市川市の法律事務所羅針盤では相続問題に力を入れて取り組んでいます。

遺産分割協議後に新たな財産が見つかってお困りの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

目次