マンション管理組合総会で招集通知に記載されていない事項を決議できる場合とできない場合

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。

マンション管理組合総会で決議できる内容には制限があります。基本的に「招集通知に記載された事項」についてしか、決議できません。

ただし「議題」と「議案」で取り扱いが異なります。「議案」であれば、招集通知に記載されていなくても決議できる可能性があります。

今回はマンション管理組合総会における「議案」と「議題」の違いや、招集通知に記載のない事項であっても決議できるのか、弁護士が解説します。

1.総会では招集通知に記載されたことしか決議できない

基本的にマンション総会では、招集通知に記載された事項しか決議できません。

招集通知に記載のない事項については区分所有者が把握しておらず、当日いきなり告げられても適切な判断が難しくなるからです。

区分所有法でも以下のように定められています。

区分所有法第37条 集会においては、第35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。

2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。

標準管理規約47条9項にも同様の規定があります。

第47条9項 総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。

第43条1項 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その開催方法)及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。

総会招集通知に記載されていない議題は、基本的に決議できないと考えましょう。

2.「議案」は記載がなくても決議できる

ただし招集通知に記載されていなかった事項であっても「議案」であれば決議できると考えられています。

議題と議案の違いについて、みてみましょう。

2-1.議題とは

議題とは「会議のテーマ」です。区分所有法や標準管理規約における「(通知すべき)事項」に該当します。

たとえば以下のようなテーマが「議題」の典型例です。

  • 第○期事業報告
  • 第○期事業計画
  • 第○期予算
  • 役員選任
  • 規約の一部改正
  • 大規模修繕計画の策定

こういった大きな「テーマ」は「議題(事項)」であり、招集通知に記載がない限り決議できません。

2-2.議案とは

議案とは、各テーマにおいて決定すべき「具体的な内容」です。

たとえば以下のようなものが議案となります。

  • 事業報告や事業計画の具体的な内容
  • 予算や決算における決算書や予算案の内容
  • 役員選任における候補者の氏名
  • 規約一部改正における条文の内容
  • 使用細則を制定する場合には使用細則の具体的な文言
  • 大規模修繕計画であれば具体的な計画内容

こうした議案は招集通知の必要記載事項ではなく、記載がなくても決議できます。

3.決議できるケースとできないケースの具体例

どういった事柄であれば招集通知に記載がなくても決議できて、どういった事柄は決議できないのか、具体例で確認しましょう。

ケース1 役員選任決議を行う場合

たとえばマンション総会で管理組合の役員を選任するとき、招集通知に「管理組合役員選任に関する件」と示されていなければ役員選任決議はできません。管理組合役員選任は「議題」だからです。

一方「〇〇号室 甲野太郎を役員候補者とする」などと具体的に書かれていなくても、甲野太郎氏を選任することは可能です。総会招集通知に記載のない人物である乙野次郎氏を選任してもかまいません。こういった具体的な人選は「議案」だからです。

なお、議案書に「〇〇号室 甲野太郎を役員候補者とする」との議案の記載があった場合に、総会において、「甲野太郎」氏に代えて、当初議案書に記載のなかった「△△号室 乙野次郎」氏を役員に選任することも、区分所有法上は可能と考えられます(東京地裁平成29年1月27日判決参照)。

「区分所有法37条1項は,集会においては,同法35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ決議することができる旨定める。同法35条によって通知した事項とは,同法35条1項の会議の目的たる事項及び同条5項の議案の要領のことをいい,同条1項では,会議の目的たる事項,すなわち議題について通知することを定め,その例外として,同条5項において,共有部分の変更,区分所有者の共有に属する敷地または附属施設の変更など,区分所有者及び議決権の各4分の3又は各5分の4以上の多数による集会の決議で決するものと定められている事項に限り,会議の目的たる事項だけでなく,議案の要領を通知することを義務付けている。
本件で問題となる,管理組合役員改選に関する件は,上記区分所有法35条5項に規定する事項ではないので,議案の通知は必要ではなく,本件通知書面で通知した議案と本件動議の同一性の問題は生じない。会議の目的たる事項の同一性についても,管理組合役員改選に関する件ということで,通知内容と本件動議とは異なるものとはいえない。よって,被告の主張は採用できない。
また,実質的にみても,区分所有法35条1項は,各区分所有者が集会に出席するかどうかは,その議題の重要性又は自分が利害関係を有するかどうかによって判断することから,会議の目的たる事項の通知を義務付け,一定の重要な決議事項については,各区分所有者があらかじめ内容を知り,検討を経た上で集会に出席し,または書面による議決権行使をすることが望ましいことから,同条5項により,一定の決議事項について議案の要領の通知を義務付けたものである。そして,同法37条1項は,同法35条により通知を義務付けた趣旨を害さないために,決議できる事項をあらかじめ通知した事項に制限したものであると解される。一方で決議事項に制限をかけることは,集会における柔軟かつ迅速な決議を妨げるものであるから,あらかじめ通知した事項を広く解すべきでない。したがって,同条5項によって議案の要領の通知が義務付けられていない事項について,議案の要領を通知したとしても,これは,区分所有法37条1項にいう同法35条によって通知した事項に含まれないから,これにより決議事項があらかじめ通知された議案の要領と実質的に同一のものに制限されることにはならないと解すべきである。
以上により,同法35条5項により,議案の要領が義務付けられていない決議事項について議案の要領を通知しても,同法37条1項による決議事項の制限は生じず,本件において,訴外P3による本件動議は,同法35条5項に定める決議事項に含まれないから,役員の改選という集会の目的の範囲内である以上,適法な議案の提案であるというべきであり,これに反する上記被告の主張は採用できない。」

東京地裁平成29年1月27日判決

ケース2 大規模修繕計画を策定する場合

大規模修繕計画を策定する際、招集通知に「大規模修繕計画の策定について」という「議題」を記載しなければ、大規模修繕計画についての決議はできません。

ただし「具体的な修繕箇所や発注先の業者、工事の期間」などの「議案」については、招集通知に書かなくても決議できます。

普通決議が適用される場合、大テーマである「議題」さえ決まっていれば、議案については柔軟に取り決めができると考えましょう。

4.議案書を送付する必要性

法律上、招集通知には「議題」さえ記載すれば足り、一部の例外を除いて、区分所有者へ具体的な「議案」まで告知する必要はありません。議案については通知に記載しなくても、決議できます。

ただ現実には、どういった議案が議論されるのかわからなければ、区分所有者が適切に判断しにくくなります。

  • 賛成すべきか反対すべきか
  • 総会に出席するか欠席するか
  • 委任状を行使すべきか

こういった事項も決めにくくなるでしょう。

そこで国土交通省の「マンション管理の適正化に関する指針」では「管理組合の管理者は事前に必要な資料を整備し、集会において適切な判断が行われるよう配慮する必要がある」と定められています。

この趣旨からしても、マンション総会を開く際には事前に区分所有者へ対し、議案書を配布すべきと考えられます。実務上も招集通知と同時に議案書を配布する事例が多いでしょう。

なお議案書に書かれていない事項であっても「議題」の範囲であれば決議は可能です。

議案書は当日の議論内容を厳密に拘束するものではありません(前記東京地裁平成29年1月27日判決参照)。

5.管理規約がある場合

招集通知に記載のない「議題」は決議できないのが原則ですが、例外もあります。

マンション管理規約において「総会招集通知に記載のない議題を決議できる」と定められていれば、通知に記載しなかった議題であっても決議ができるのです(区分所有法37条2項)。

区分所有法第37条2項 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。

こうした規約のあるマンションでは、招集通知に記載されていなかった事項であっても決議できる可能性があります。ただし特別決議を要する事項は除かれます。

6.特別決議を要する場合

マンション総会で「特別決議」を要する場合、招集通知への記載事項はさらに厳しくなります。

特別決議とは、特に重要な事項について特別多数の賛成がないと可決できない決議です。

一般の普通決議であれば出席した区分所有者の人数や議決権の「過半数」で決議できますが「特別決議」の場合には「4分の3」や「5分の4」以上の賛成がないと可決できません。

また特別決議の場合「出席した区分所有者」ではなく「全区分所有者(欠席者も含む)」の人数と議決権を基準にして4分の3や5分の4をカウントします。

区分所有法では、特別決議を要する事項として以下の8種が規定されています。

  • 管理規約の設定・変更・廃止(第31条)
  • 管理組合法人の成立(第47条)
  • 共用部分等の変更(第17条・第21条)
  • 大規模滅失における建物の復旧(第61条第5項)
  • 建物の建替え(第62条)
  • 専有部分の使用禁止の請求(第58条)
  • 区分所有権の競売の請求(第59条)
  • 占有者に対する引渡し請求(第60条)

「建物の建替え」以外の7つは「全区分所有者数の4分の3以上」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成があれば可決できます。建て替え決議については「全区分者数の5分の4」かつ「議決権の5分の4」の賛成がなければ可決されません。

6-1.特別決議の招集通知で示すべき事項

特別決議を必要とする場合、招集通知に「議題」だけではなく「議案の要領」まで示さねばならない可能性があります。

たとえば以下のような事項を議論する場合、議案の要領を記載しなければなりません。

  • 共用部分の変更
  • 規約の制定、変更、廃止
  • 大規模一部滅失の復旧
  • 建て替え

上記に該当する場合、事前に区分所有者へ「議題」を示すだけではなく「議案」についてもある程度示さねば決議ができません。

一方、特別決議事項であっても以下のようなものの場合、議案の要領まで示す必要はありません。

  • 管理組合の法人化
  • 共同の利益に反する行為を行ったものへ使用禁止請求、競売請求
  • 占有者に対する引き渡し請求

6-2.管理規約があっても議題の提示が必要

特別決議を要する事項については、マンション管理規約で「総会招集通知に記載のない議題を決議できる」と定められていても、招集通知に記載しなければ決議ができません。

特別決議事項は普通決議事項とは異なり、区分所有者に多大な影響を及ぼす可能性の高いものです。区分所有者の利益を守るため、事前の議題通知や「議案の要領」を知らせる必要があるというのが法の趣旨です。

マンション管理組合の運営は法律事務所羅針盤へご相談ください

マンション管理組合の運営は、法律や管理規約、行政による指針などにもとづいて適正に行わねばなりません。法律に違反すると大きなトラブルに発展してしまうリスクも発生します。 法律事務所羅針盤では、マンション管理士の資格を持った弁護士が管理組合へのサポートに力を入れております。どのように対応すればよいか判断に迷ったら、お気軽にご相談ください。

関連記事

  1. マンション管理費の時効期間は?

  2. 公正証書遺言作成手続の流れ。費用・必要書類など弁護士が解説

  3. 定期建物賃貸借契約(定期建物賃貸借契約)と普通借家契約との違…

  4. マンション管理組合の理事長、監事、理事の解任手続きをパターン…

  5. 相続手続における生命保険金の取扱い

  6. 弁護士が教える相続お役立ち情報

PAGE TOP