千葉県のマンション老朽化問題と管理組合が法改正前にやるべき5つのこと

「うちのマンション、最近あちこちガタがきている気がする」

「管理組合の役員のなり手がいなくて困っている」

「修繕積立金、本当に足りているのだろうか」

千葉県内のマンションにお住まいの方、あるいは管理組合の役員をされている方で、こうした不安を感じている方は少なくないのではないでしょうか。

近年、千葉県を含む全国のマンションで「老朽化」が深刻な社会問題になりつつあります。そして2026年4月には、マンション管理の基本ルールである区分所有法が大きく改正されます。

この記事では、千葉県内のマンション老朽化の現状をわかりやすく整理したうえで、管理組合として今のうちに取り組んでおくべきことを5つにまとめました。「まだ先の話でしょ」と思っている方にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。

目次

千葉県のマンション老朽化、今どうなっている?

全国で急増する「築40年超」のマンション

国土交通省のデータによると、全国の築40年以上のマンション(いわゆる「高経年マンション」)は、2021年末の時点で約115.6万戸にのぼります。これだけでも大きな数字ですが、問題はここからの増え方です。10年後には約249万戸(約2.2倍)、20年後には約425万戸(約3.7倍)にまで急増すると見込まれています。

今はまだ築30年台のマンションが、これから次々と「築40年超」の仲間入りをしていくということです。マンションの老朽化問題は、今後ますます身近な問題になっていきます。

千葉県が「老朽化の波」を受けやすい理由

千葉県は、東京都心のベッドタウンとして1970年代〜80年代にかけて大量のマンション・団地が建設された地域です。とくに千葉市、船橋市、松戸市、柏市、市川市といった総武線・常磐線沿線の都市には、この時期に建てられた大規模マンションや公団住宅が数多く残っています。

すでに築40年〜50年に差し掛かっているマンションも多く、千葉県は、全国の中でも特にマンション老朽化の影響を受けやすい地域なのです。

千葉県内で実際に動き出した建替え事例

こうした問題はもはや将来の話ではありません。千葉県船橋市の若松二丁目住宅では、築年数の経過によるインフラの劣化やバリアフリー基準への不適合といった問題を背景に、従前戸数576戸という千葉県内過去最大規模の建替え事業が2025年に着工されました。

なんと、2007年頃から管理組合内で検討が始まり、建替え推進決議、事業協力者の選定、一括建替え決議を経て、実に約18年をかけてようやく着工に至ったものです。

つまり、建替えには非常に長い時間がかかります。

マンションが古くなると何が起きる?「2つの老い」問題

マンションの老朽化問題を語るうえで「2つの老い」というキーワードがよく語られます。

これは、建物自体が古くなる「高経年化」と、そこに住む人が高齢になる「居住者の高齢化」が同時に進行する現象のことです。法務省も、2025年に成立した改正区分所有法の趣旨説明において、この「2つの老い」を法改正の背景として位置づけています。

建物の老い。目に見える劣化、目に見えない危険

築40年を超えるマンションでは、外壁のコンクリートがはがれ落ちたり、鉄筋がさびて露出したり、給排水管が腐食して水漏れを起こしたりといった、安全面に直結するトラブルが増えてきます。

こうした劣化は、見た目が悪くなるだけの問題ではありません。外壁片の落下は通行人への危険につながりますし、水漏れは下の階の住戸に大きな被害を及ぼします。さらに、旧耐震基準(1981年以前)で建てられたマンションの場合、大地震への備えにも不安が残ります。千葉県は首都直下地震の想定エリアでもあり、耐震性の問題は軽視できません。

人の老い。「管理する人がいない」という危機

建物の問題と同じくらい深刻なのが、管理を担う「人」の問題です。国土交通省の調査によると、管理組合の役員を引き受けない理由として最も多いのが「高齢のため」で、約3割を占めています。

住民が高齢化すると、総会への出席が難しくなる、修繕積立金の値上げに対応できない、空き住戸が増えて連絡がつかないオーナーが出てくる、といった問題が連鎖的に起こります。その結果、必要な決議ができず、修繕工事が先送りになり、さらに建物が劣化する——という悪循環に陥ってしまうのです。

2026年4月施行「区分所有法の改正」で何が変わる?

こうしたマンションの老朽化問題に対応するため、国は法律を大きく見直しました。2025年5月23日に「改正区分所有法」が国会で成立し、2026年4月1日から施行されます。

区分所有法とは、分譲マンションのように一棟の建物を複数の人が区分して所有する場合のルールを定めた法律です。簡単に言えば「マンションの住民みんなで決め事をするときのルールブック」のようなものです。

今回の改正は約60年ぶりの大改正とも言われており、管理組合の運営に直接影響する内容が多く含まれています。主なポイントを3つご紹介します。

ポイント① 建替え決議のハードルが下がる

これまで、マンションの建替えを決議するには「区分所有者および議決権の5分の4(80%)以上」の賛成が必要でした。たとえば100戸のマンションなら、80人以上の賛成がなければ建替えは実現できません。高齢化や所在不明の所有者がいる状況で、この高いハードルを超えるのは非常に難しいのが現実でした。

今回の改正では、耐震性が不足している場合や、バリアフリー基準に適合していない場合など、一定の条件を満たすマンションについて、建替え決議に必要な賛成を「4分の3(75%)以上」に引き下げることが可能になります。

ポイント② 所在不明の所有者を決議から除外できる

相続などをきっかけに、マンションの所有者が誰なのか、どこに住んでいるのかわからないというケースが増えています。現行制度では、こうした所在不明の所有者も決議の母数(分母)に含まれるため、事実上「反対」と同じ扱いになってしまいます。

改正法では、裁判所に申し立てを行い、認められれば所在不明の所有者を決議の母数から除外できるようになります。これにより、残った所有者だけで必要な賛成数を満たしやすくなります。

ポイント③ 管理規約の見直しが必要に

法改正にともない、国土交通省は2025年10月にマンション標準管理規約の改正版を公表しました。多くのマンションの管理規約は旧法をベースに作られているため、新しい法律の内容に合わせた改定が必要になります。

とくに総会の決議要件や、新たに導入される「国内管理人制度」(海外に住む所有者に国内の連絡窓口を置いてもらう仕組み)に関する規定などは、早めに検討を始めておくことが重要です。

千葉県のマンション管理組合が「今」やるべき5つのこと

法改正の施行まで残りわずかです。「うちのマンションにはまだ関係ない」と思わず、以下の5つのポイントを早めにチェックしてみてください。

① 管理規約を見直す

まずは、現在の管理規約が最新の法律やガイドラインに対応しているかを確認しましょう。国土交通省が公表した改正後の標準管理規約を参考に、自分たちのマンションの規約と見比べてみてください。

総会の決議要件、役員の選任方法、外部居住者への対応ルールなど、改正が必要な箇所は意外と多いものです。規約の改正には総会での特別決議(原則として区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成)が必要ですので、準備には十分な時間が必要です。

規約改正の内容が法的に適切かどうかの判断は、マンション管理について詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

② 長期修繕計画と修繕積立金を点検する

長期修繕計画は、マンションの今後30年以上の修繕スケジュールとその費用を見通す計画書です。国のガイドラインでは「計画期間30年以上」「期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること」が目安とされています。

お住まいのマンションの長期修繕計画は、この基準を満たしていますか? また、そこに書かれた費用に対して、実際の積立金は足りていますか?

もし計画が古くなっている場合は、管理会社やマンション管理士と連携して見直しを行うことが大切です。

③「管理計画認定制度」の活用を検討する

2022年から始まった「管理計画認定制度」は、マンションの管理状態が一定の基準を満たしていると、自治体から公式に「認定」を受けられる仕組みです。千葉県内でも千葉市、船橋市をはじめ多くの市が対応を開始しています。

認定を受けると、住宅金融支援機構の「フラット35」で金利が引き下げられたり、大規模修繕工事を行った際に固定資産税の減税措置が受けられたりするメリットがあります。千葉市では認定申請の手数料が無料とされており、コスト面でも取り組みやすくなっています。

認定の取得は、「きちんと管理されているマンション」として市場で評価されることにもつながり、将来の資産価値の維持にプラスに働きます。

④ 所在不明・連絡のつかない所有者を把握する

管理組合の名簿に載っている所有者のうち、連絡がつかない方はいませんか? 空き住戸になっている部屋の所有者がどこにいるか、把握できていますか?

2026年4月からは、所在不明の所有者を決議の母数から除外する手続きが利用できるようになります。しかし、そのためにはまず「誰が所在不明なのか」を正確に把握しておく必要があります。

今のうちに名簿を整理し、連絡がつかない所有者がいる場合は、管理会社とも協力してその実態を調べておきましょう。相続が発生している可能性がある場合は、弁護士による法的な調査が有効です。

⑤ 専門家に早めに相談する

管理規約の改正、修繕計画の見直し、建替えや売却の検討、所在不明所有者への法的対応——これらはいずれも、管理組合の理事だけで判断するには荷が重いテーマです。

とくに法改正が絡む問題については、改正内容を正しく理解したうえで、自分たちのマンションにどう適用されるのかを具体的に検討する必要があります。マンション管理士、弁護士、建築士など、それぞれの専門家の力を借りることで、より確実で適切な対応が可能になります。

「まだ大丈夫」と先送りにしてしまうと、いざ問題が顕在化したときに選択肢が狭まってしまいます。早めの相談が、マンションの将来を守る第一歩です。

マンション管理組合の法的トラブル、弁護士に相談できること

弁護士と聞くと「裁判のときに頼む人」というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、マンション管理の場面では、トラブルの予防として相談いただくことも多くあります。

たとえば、以下のようなお悩みについては、弁護士がお手伝いできます。

  1. 管理費・修繕積立金の長期滞納者への督促や法的対応
  2. 管理規約の改正内容のチェック、総会議案の作成サポート
  3. 管理規約に違反する住民への対応方法の助言
  4. 建替え・売却に向けた合意形成のサポート
  5. 管理会社との契約内容の確認・見直し
  6. 所在不明所有者の調査・法的手続き
  7. 区分所有法改正にともなう管理組合運営の見直し

「こんなことを相談してもいいのかな」と迷われる方もいらっしゃいますが、小さな疑問の段階でご連絡いただくことが、大きなトラブルを防ぐことにつながります。信頼できる専門家に早めにご相談ください。

マンション管理よくあるご質問

Q. 管理組合の建替え決議は、法改正でどう変わりますか?

A. これまで建替え決議には区分所有者と議決権の「5分の4以上(80%以上)」の賛成が必要でしたが、2026年4月からは、耐震性不足やバリアフリー基準不適合などの要件を満たす場合、「4分の3以上(75%以上)」に緩和されます。また、所在不明の所有者を裁判所の手続きで母数から除外できる仕組みも導入されます。

Q. 修繕積立金が足りない場合、管理組合として何をすべきですか?

A. まずは長期修繕計画を見直し、今後必要になる修繕費用の総額を正確に把握することが大切です。そのうえで、積立金の段階的な値上げや均等積立方式への変更、必要に応じて一時金の徴収などを総会で検討します。値上げの進め方や議案の作り方については、マンション管理士や弁護士に相談することで、住民の理解を得やすい進め方を考えることができます。

Q. 千葉県で管理計画認定制度を利用するにはどうすればよいですか?

A. 管理組合の総会で認定申請の決議を行ったうえで、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を通じて申請します。マンション管理士による事前確認を経て、各市(千葉市・船橋市など)が認定を行います。千葉市では認定申請の手数料が無料です。認定基準には「長期修繕計画が30年以上」「修繕積立金の額が著しく低額でない」などの条件があります。

まとめ

千葉県内のマンションは、1970年代〜80年代に大量に建設された物件の老朽化が本格化する時期を迎えています。建物の劣化と住民の高齢化という「2つの老い」が重なり、管理組合の運営はこれまで以上に難しくなっていきます。

一方で、2026年4月に施行される区分所有法の改正により、建替えや管理の意思決定がしやすくなる新しい仕組みも整備されます。この法改正をチャンスと捉え、今のうちから管理規約の見直しや修繕計画の点検、所在不明所有者の把握などに取り組んでおくことが、マンションの将来を守ることにつながります。

「何から手をつければいいかわからない」という場合は、ぜひ専門家にご相談ください。当事務所では、千葉県内のマンション管理組合の皆さまからのご相談をお待ちしております。

【主な参照資料】

・国土交通省「マンションを取り巻く現状について」
・国土交通省「築40年以上の分譲マンション数の推移(2024年末現在)」
・国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」
・国土交通省「マンション標準管理規約(2025年10月改正)」
・法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」
・千葉県「マンションの管理計画認定制度について」

※本記事は2026年2月時点の情報に基づいて作成しています。最新の法令・制度の詳細については、専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

千葉県の市川市の法律事務所 羅針盤の弁護士。「お客様の根本問題を解決する」がモットー。複雑な法律の知識についてわかりやすく解説します。

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