相続不動産の評価額、どう決める?意見が合わない時の解決へのヒント

目次

大切な不動産の評価で揉めてしまう

ご家族が遺してくれた大切な不動産。

それは、思い出の詰まったご実家かもしれませんし、将来の生活の支えとなるかもしれない土地や収益物件かもしれません。

しかし、その不動産を相続人で分ける際、「評価額をいくらにするか」という点で意見がまとまらず、話し合いが難航してしまうことがあります。

「他の相続人が提示する評価額に納得できない…」
「どうやって公平な価格を決めればいいのか分からない…」
「このままでは、話し合いが進まないのでは…」

不動産は、預貯金のように簡単に分割できるものではなく、また評価方法も一つではないため、相続財産の中でも特に意見が対立しやすいのです。

このページでは、相続不動産の評価額で相続人同士の意見が合わずにお困りの方のために、

  1. なぜ不動産の評価で意見が分かれやすいのか
  2. 不動産の主な評価方法にはどんなものがあるのか
  3. 話し合いが進まない場合の対処法
  4. 専門家(弁護士など)はどんなお手伝いをしてくれるのか

といったことを、できる限り分かりやすく説明していきます。


相続不動産の評価で意見が分かれやすい理由

まず、どうして不動産の評価額は、相続人の間で意見が食い違いやすいのでしょうか。 いくつかの理由が考えられます。

  • 「決まった値段」がないから
    不動産には定価がなく、取引される時々で価格が変わります。
  • 評価の「ものさし」が複数あるから
    税金の計算用、実際の取引価格など、色々な評価の目安があります。
  • それぞれの「希望」が違うから
    住み続けたい、売りたいなど、相続人それぞれの考えが評価額への意見に影響します。

こうした理由から、不動産の評価は、相続の話し合いの中でも特に慎重な対応が求められます。


不動産の価値、どうやって知る? ~主な評価の目安~

遺産分割の話し合いでは、主に以下のような評価の目安が参考にされます。

主な不動産の評価方法
  • 固定資産税評価額
    市区町村が税金計算のために決める額。納税通知書で確認できます。
  • 相続税路線価
    国税庁が相続税計算のために決める土地の値段。建物の評価はありません。
  • 不動産鑑定士の評価額
    専門家が客観的に算出する価格。費用はかかりますが、公平性が高いです。
  • 実際の取引価格(時価)
    周辺で売買された事例や、不動産会社の査定額など。

どの目安を使うか、相続人全員で納得して決めることが、円満な解決の第一歩です。


こんなお悩みありませんか? ~不動産評価のよくあるケースと注意点~

不動産の評価は、特に収益を生む物件や借金が絡む場合、より複雑になりがちです。

ケース1

アパートなど収益物件の評価、「税金の評価額」と「実際の価値」が違う?

家賃収入のある不動産(アパートや賃貸マンションなど)を相続する場合、相続税の申告では、税法上の特例などで、実際の取引価格(時価)よりもかなり低い評価額で計算されることがよくあります。 もし、遺産の分け方の話し合いでこの低い「税金用の評価額」をそのまま使ってしまうと、その物件をもらう人だけが有利になり、他の相続人との間で不公平が生じてしまう可能性があります。 大切なのは、皆が納得できる「分け方の基準となる評価」をどう見つけるかです。

ケース2

ローンが残っている収益物件、「借金を引いた額が価値」って本当?

収益物件にローンなどの借金が残っている場合も注意が必要です。 例えば、その物件を相続する人が「ローンも全部私が引き継ぐから、物件の評価額からローンの金額を差し引いたものが、この物件の本当の価値だ」と主張することがあります。 一見、もっともらしく聞こえるかもしれません。しかし、もし物件の評価額を先ほどのような「税金用の低い評価額」で計算し、そこから実際の借金の額を差し引いてしまうと、物件の価値がほとんどゼロか、場合によってはマイナスになってしまうことも。これでは、他の相続人にとっては非常に不利な分け方になってしまいます。 借金の扱いと、物件そのものの評価は、分けて慎重に考える必要があります。

これらのように、不動産の評価は単純ではありません。気づかないうちに不利な条件を受け入れてしまう可能性もありますので判断は慎重に行うようにしてください。


話し合いが進まない…解決へのヒント

評価額で意見が衝突し、話し合いが行き詰まってしまったら、どうすれば良いでしょうか。

  • 公平な第三者の意見を聞く
    不動産鑑定士に正式な評価を依頼すると、客観的な判断材料が得られ、話し合いの基準になります。
  • 分け方を工夫する
    必ずしも現物のまま分ける必要はありません。不動産を売却して現金で分けたり(換価分割)、誰か一人が相続し、他の相続人に評価額との差額を現金で支払ったり(代償分割)する方法も検討しましょう。
  • 家庭裁判所の「遺産分割調停」を利用する
    当事者だけでの話し合いが難しい場合、家庭裁判所の調停委員が中立な立場で間に入り、話し合いをサポートしてくれます。
  • 早めに専門家(弁護士)に相談する
    問題がこじれる前に弁護士に相談することで、法的な観点から適切なアドバイスを受けられます。あなたに代わって他の相続人と交渉したり、調停や審判の手続きをサポートしたりすることも可能です。弁護士は、状況を整理し、あなたにとって最善の解決策を一緒に考えます。

「他の相続人との話し合いが、感情的になってしまって進まない…」
「公平な評価のためにはどうすればいいのだろう…」

そんなお悩みやご不安を抱えていらっしゃるなら、弁護士などの専門家に相談するという選択肢も検討してみてください。弁護士は、あなたの心強い味方となり、次のようなサポートをしてくれます。

  • 状況の整理と法的なアドバイス
    あなたのお話を丁寧にお伺いし、不動産の評価について、どのような方法が考えられるか、それぞれのメリット・デメリットは何か、法的な観点から分かりやすくアドバイスします。
  • 他の相続人との交渉代理
    あなたに代わって、または一緒に、他の相続人と冷静かつ論理的に話し合い(交渉)を進めます。感情的な対立を避け、円満な合意形成を目指します。
  • 不動産鑑定士との連携サポート
    客観的な評価が必要な場合、信頼できる不動産鑑定士の紹介や、鑑定依頼の手続きをサポートします。鑑定結果を基にした交渉も行います。
  • 遺産分割協議書の作成
    合意に至った内容を、法的に有効で、後日のトラブルを防ぐための「遺産分割協議書」として正確に作成します。
  • 調停・審判への対応
    話し合いでの解決が難しい場合には、家庭裁判所での「遺産分割調停」や「審判(裁判官が最終的な判断を下す手続き)」といった法的手続きも、あなたの代理人として適切に対応し、あなたの正当な権利を守るために尽力します。
  • 精神的なサポート
    法的な問題解決だけでなく、あなたが抱えるご不安な気持ちに寄り添い、安心して手続きを進められるようサポートします。

弁護士に相談することは、問題をこじらせる前に、よりスムーズで円満な解決を目指すための有効な手段です。初回は無料で相談できる弁護士事務所も多いので、まずは、あなたの今の状況や、お困りのことを、ありのままお話ししてみてはいかがでしょうか。


納得のいく、公平な解決のために

ご家族が遺してくれた大切な不動産。

その価値を公平に評価し、皆が納得できる形で分けることは、今後のご家族の関係にとっても非常に重要です。

評価額で意見が合わないことは、決して珍しいことではありません。

一人で悩みすぎず、一歩ずつ解決に向けて進んでいきましょう。

あなたの心が少しでも軽くなり、円満な解決が見つかることを心から願っています。

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