マンション総会・理事会 運営Q&A|トラブル対応と弁護士相談の目安

マンション管理総会理事会FAQ

輪番制や推薦で、ある日突然、マンション管理組合の役員に就任し、「一体何から手をつければいいのだろう…」と戸惑いを感じていませんか?

普段の仕事や家事だけでも忙しいのに、専門用語や、大量の資料を前に、頭を抱えている方も少なくないかもしれません。

多くの理事会は和やかに進みますが、時には「理事同士の深刻な対立」や「総会での議事妨害」といった、テレビドラマのようなトラブルが、現実にも起こり得ます。

この記事では、役員になったばかりの方でも安心して運営に取り組めるよう、総会・理事会の基本的な進め方から、弁護士への相談も視野に入るような深刻なトラブルへの対応策までを、Q&A形式で分かりやすく解説します。

目次

マンション管理組合の理事会と総会

Q. 「理事会」と「総会」の役割分担がよく分かりません。

A. この2つの違いは管理組合の運営にとって大事なポイントです。

  • 理事会は「実行部隊」 組合員の中から選出された役員で構成され、マンションの日常的な運営に関する決定(清掃のチェック、小修繕、住民からの要望検討など)を行います。
  • 総会は「最高意思決定機関」 組合員全員(部屋の所有者全員)で構成され、管理規約の変更や大規模修繕工事の実施、予算・決算の承認など、マンション全体の最も重要なことを決める会議です。

理事会は、総会で決まった大きな方針に従って、日々の業務を実行していく、という関係性になります。


マンション管理における理事会の運営とトラブル対応

Q. 理事会は、何を話し合えばいいですか? また、意見がまとまらない場合は?

A. 月に1回程度、管理会社も交えて開催し、収支状況や設備点検の報告を受けたり、住民からの要望を検討したりするのが一般的です。

しかし、理事会内で意見が激しく対立し、何も決められない状況に陥ることもあります。基本的な意思決定は多数決で行いますが、特定の理事が感情的に反対を繰り返す、あるいは非協力的で理事会が機能しない、といった事態も想定されます。

弁護士相談の目安

  • 理事間の対立が深刻で、理事会が数ヶ月にわたり機能不全に陥っている。
  • 理事長が他の理事の意見を聞かず、独断で物事を進めようとしており、止められない。
  • 特定の理事が、規約や法令に反するような主張を繰り返して譲らない。

このような場合、理事会の運営方法そのものや、問題のある理事に対する法的な対応(解任手続きなど)について、弁護士に相談することを検討すべきです。

Q. 管理費の使い込み(横領)が疑われます。どう対応すればよいですか?

A. これは管理組合における最も深刻なトラブルの一つです。特に監事や会計担当の理事は、毅然とした対応が求められます。

  1. 証拠の確認と保全: まずは、理事長や会計担当理事に、会計帳簿、銀行通帳の写し、領収書などの提出を求め、内容を精査します。個人での追及は危険ですので、この段階ではまだ本人に直接問い詰めないでください。
  2. 理事会での報告: 不審な点が見つかった場合、他の理事に事実を報告し、協力を求めます。
  3. 専門家への相談: 横領の疑いが濃厚となったら、すぐに弁護士に相談してください。個人で解決しようとすると、証拠を隠されたり、逆上されたりするリスクがあります。

弁護士相談の目安

  • 通帳の支出と領収書が合わない、使途不明金があることが発覚した。
  • 会計担当理事が、帳簿の開示を正当な理由なく拒否する。

弁護士は、証拠の集め方から、横領した人物への返還請求、そして「業務上横領罪」での刑事告訴まで、法的な手続きを全面的にサポートします。


マンション管理における総会の運営とトラブル対応

Q. 総会の準備は、どんなスケジュールで進めればよいですか?

A. 年に一度の通常総会は、事業年度終了後、2~3ヶ月以内に開催するのが一般的です。慌てないよう、計画的に準備を進めましょう。典型的なスケジュールは以下のとおりです。

  • 【3ヶ月前】 日程と議題の骨子を理事会で検討。決算・予算案の作成を管理会社に依頼。
  • 【2ヶ月前】 総会議案を確定させ、総会資料(活動報告、決算書、予算案など)を理事会で精査。
  • 【1ヶ月前】 招集通知と議案書の準備。
  • 【2週間前まで】 (法律上の期限) 全区分所有者に招集通知を発送します。

Q. 総会の議事進行を妨害する人がいて、会議になりません。

A. 総会では、特定の区分所有者が大声を出したり、議題と無関係な発言を繰り返したりして、議事進行を妨害するケースがあります。

議長には、総会の秩序を維持する権限(議事進行権)があり、妨害行為を続ける人に対して退場を命じることもできます。しかし、感情的な対立を激化させる危険も伴います。冷静に制止しても従わない場合は、その場で無理に続けず、一度休憩を入れたり、その日の総会は流会(成立せず終了)とし、後日改めて開催したりすることも有効な手段です。

弁護士相談の目安

  • 特定の人物による妨害行為が常態化しており、総会の正常な運営が困難。
  • 暴力的な言動や脅迫的な発言があり、他の出席者が恐怖を感じている。
  • 総会終了後、「議長の運営は違法だ」などと主張し、個人的に責任を追及するような動きを見せている。

弁護士は、議事進行妨害への法的な対抗策(将来の妨害行為を禁止する仮処分など)や、役員個人を守るためのアドバイスを提供できます。

Q. 総会で決まったことに対し「決議は無効だ!」と訴訟を起こされそうです。

A. 総会決議の有効性を争う「総会決”議無効確認訴訟」や「総会決議取消訴訟」は、実際に起こりうる法的な紛争です。 訴えの理由としては、「招集通知が期限内に届いていなかった」「決議に必要な定足数(出席者数)が足りていなかった」「議案にないことを勝手に決議した」など、手続き上の不備が主張されることが多いです。

弁護士相談の目安

  • 区分所有者から、総会決議の無効を主張する内容証明郵便が届いた。
  • 「訴訟を起こす」と公言している人がいる。
  • 自分たちの総会運営に、手続き上の不備がなかったか不安がある。

このような主張をされた時点で、手遅れになる前に、直ちに弁護士に相談してください。決議の有効性を法的な観点から検証し、訴訟になった場合の対応を協議する必要があります。


管理組合の役員は、ほとんどの場合ボランティアでありながら責任のある大変な役割です。全てのトラブルを役員だけで解決しようとせず、管理会社と連携し、そして法的な問題が絡む場合は、弁護士という専門家を頼ってください。それが、組合全体と役員の皆様自身を守ることにつながります。

この記事を書いた人

千葉県の市川市の法律事務所 羅針盤の弁護士。「お客様の根本問題を解決する」がモットー。複雑な法律の知識についてわかりやすく解説します。

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